NFLは実働期間が約5カ月であるにもかかわらず、北米スポーツでナンバーワンの人気を誇り、一大マーケットとなって巨額の金が動く。ニューヨークはもとより、シカゴ、ダラス、マイアミといった主要都市にチームが存在し、それぞれが大きな収益をあげてリーグ経営に貢献している。


 NFLは「レベニューシェアリング」という収益分配システムを採用している。リーグが放送権料などで得た収入は全32チームに均等に分配される。だから、バファロー(ニューヨーク州)やグリーンベイのようにマーケットとして小さい都市でもチーム経営が成り立つ仕組みになっているのである。


 そんな中、NFLが是が非でも手に入れたい巨大都市がある。ロサンゼルスだ。
 ロサンゼルスにはかつてラムズとレイダーズが存在した。
 しかし、1994年シーズンを最後にラムズがセントルイスへ移転し、レイダーズは1981年までフランチャイズとしていたオークランドに戻った。それ以降、NFLではロサンゼルスにチームが存在しない。


 ロサンゼルスは全米で2位のテレビマーケットを持つとされる。すなわち、ここにチームが存在すればNFLは現在以上のテレビ放送権を獲得することが可能なのだ。
 1994年以降、NFLでは四つの都市で新チームが誕生したが、いずれの場合もロサンゼルスは見送られた。


 現行の32チーム制となった2002年以降は、4チームが8地区に均等に分かれるフォーマットが崩れるのを嫌ってか、新興チーム誕生の機運が弱くなった。代わって移転によってロサンゼルスにチームを復活させようという動きは常にあり、これまでもバイキングズやジャガーズなどに移転の噂が持ち上がった。


 チームの移転は多くの場合、スタジアム建設問題が絡んでいる。本拠地が老朽化したチームは新スタジアム建設を希望する。その方がより多くの集客を見込めるからだ。
 しかし、チームやオーナー自らの財力で数億ドルに及ぶスタジアムを建設できるケースはほとんどなく、たいていは市や州に建設を依頼する。行政は税金を投入することになるから、スタジアム建設には及び腰になりやすい。そこでチームとの間に溝が生じ、しびれを切らしたチームが移転するというのが多くのパターンだ。


 ボルティモアに移ってレーベンズとなった旧クリーブランド・ブラウンズはその典型的な例だ。逆にバイキングズはようやく新スタジアム建設が決定し、チームの移転の噂も立ち消えとなった。


 さて、すでに20年以上もチームのないロサンゼルスだが、ここにきて急速に動きが出てきた。ラムズのオーナー、スタン・クロンキー氏がロサンゼルスへの新スタジアム建設計画を発表したのである。
 この計画はまだ正式に認可されたものではなく、決定事項ではない。しかし、実現すればラムズが再びロサンゼルスに戻ってくる可能性は高くなる。


 その一方で、ロサンゼルス郊外のカーソンという街が新スタジアムを建設し、レイダーズとチャージャーズを招致するという、これも素案段階の計画を明らかにした。ただし、これは実現性がほとんどないとの見方もある。


 レイダーズとチャージャーズは同じAFC西地区に所属するライバル同士で、それが同じスタジアムを本拠地とするのは考えにくい。さらに、チャージャーズの存在するサンディエゴ市も簡単にはチームを手放さない構えだ。


 ロサンゼルスという魅力的なマーケットだけにチーム招致の噂は絶えず、注目度も高い。果たして、NFLはこのマーケットを再び手に入れることができるのか。既存のチームが移転するとしたらそれはラムズか、レイダーズか、チャージャーズか。それともまったく別のチームなのか。
 新チーム誕生の可能性はあるか。ロサンゼルスは今、チームが存在しないにもかかわらず、NFLで話題性のある都市なのだ。

【写真】巨大都市ロサンゼルス、夜のダウンタウン(AP=共同)