熱戦の余韻はまだ続いているようで、2週間以上が過ぎた今でも今年のスーパーボウルが話題に上ることがある。それも、特にコアなフットボールファンというわけでもない方々が「いやあ、今年のスーパーボウルは面白かったね」「あそこでインターセプトが出るなんて」と話題を振ってくる。いろんな人たちに楽しんでもらえたのはうれしい限りである。


 NFLのシーズンで最も重要であるスーパーボウルでは、意外なヒーローが誕生することが少なくない。以前のこのコラムでも触れたが、今年で言えばペイトリオッツの勝利を決定づけるインターセプトを決めたSマルコム・バトラーや、4回のパスキャッチで109ヤード獲得の活躍を見せたシーホークスのWRクリス・マシューズがその例だ。
 バトラーは控えDBだったし、マシューズは12月にチームと契約したばかりのスペシャルチーム要員である。


 第42回大会(2007年シーズン)ではジャイアンツの無名のWRデービッド・タイリーが今でも語り継がれる「ヘルメットキャッチ」で勝利の立役者となった。
 この試合は、残り時間2分42秒でペイトリオッツが14―10と逆転に成功。レギュラーシーズンとポストシーズンで一度も負けない「パーフェクトシーズン」に王手をかけた。


 続くジャイアンツの攻撃は自陣44ヤードラインで第3ダウン5ヤードに追い込まれた。このプレーでQBイーライ・マニングはパスラッシュしてきたディフェンダーにジャージをつかまれながらも、かろうじてパスを投げることに成功する。


 半ばヤケクソ気味に見えたロングパスだったが、それをタイリーがDBとの競り合いの中で倒れ込みながらもキャッチしたのだ。しかも、両手とヘルメットの頭頂部でボールを挟み込むようにして。この奇跡的なキャッチで敵陣に侵入したジャイアンツはこのドライブをTDで完結し、劇的な勝利をもぎ取ったのだった。


 一気に時間をさかのぼって恐縮だが、第30回大会(1995年シーズン)で2インターセプトを記録してMVPに輝いたCBラリー・ブラウンという選手がいる。ルーキー時から先発していた実績はあるが、この年のFAで加入したスターDBディオン・サンダースの陰に隠れた、いわば伏兵だった。


 ただ、タイリーやブラウンがその後も輝かしい実績を残したかというとそうではない。タイリーは結局レギュラーに定着することができず、レーベンズに移籍した後2009年限りで引退。現在はジャイアンツの選手育成担当として働いている。
 ブラウンはスーパーボウル直後にFAとなってレイダーズに高額契約で移籍したが、これといった実績を残せないままに終わった。


 上記の二人とは事情が違うが、2000年にリーグを制覇したレーベンズの正QBトレント・ディルファーも天国と地獄を味わった。ディフェンスの強いレーベンズではQBはミスのない試合運びをすれば十分だった。
 派手さはないが、堅実なプレーをするディルファーは適役だったのだが、それでも翌年にはオフェンスの得点力アップを目指すチームの方針に合致せず、先発の座をはく奪されてしまった。


 一発勝負のスーパーボウルでは勢いに乗った選手がそのまま活躍するケースがある。相手からのマークが薄くなる伏兵こそ、そのチャンスは大きいかもしれない。
 しかし、やはりコンスタントにいいプレーができる実力がなければ競争の激しいNFLで生き残ることはできない。ディルファーの場合はQBという重要なポジションで、やはりゲームをコントロールできる能力がなければ通用しないという例だ。


 「one-game wonder」とか「one-year wonder」といった用語が英語にはある。1試合だけ、あるいは1年だけ活躍できる選手を揶揄する言葉だ。つまり「一発屋」のことである。一発屋がそのまま活躍し続けられるほどNFLは甘くない。その厳しさにバトラーとマシューズは挑むことになる。彼らにスーパーボウルの余韻に浸っている暇はない。

【写真】優勝パレードで祝福されるペイトリオッツのSバトラー(AP=共同)