NFLの2014年度王者を決める、第49回スーパーボウルは残り試合時間20秒で飛び出したゴール前のインターセプトで決するという劇的な幕切れで、AFC代表のペイトリオッツが前年優勝のシーホークスを28―24で破った。


 ペイトリオッツは10季ぶり4度目のリーグ制覇を達成。QBトム・ブレイディはテリー・ブラッドショー(スティーラーズ)、ジョー・モンタナ(49ers)と並ぶ史上最多タイのスーパーボウル4勝目をあげ、3度目のMVPに輝いた。
 指揮官のビル・ベリチックも4勝目でチャック・ノール(スティーラーズ)と並ぶ大会史上最多勝HCとなった。


 前半を終えて14―14の同点。第3QにシーホークスがFGで加点したあと、ブレイディのインターセプトから得たチャンスをTDに結び付けて10点差のリードを奪う。しかし、終始安定したパスオフェンスを展開したペイトリオッツは第4Qに2TDを挙げて逆転。一転して追う立場となったシーホークスも粘りを見せ、ゴール前1ヤードまでボールを進めるが、最後はビッグプレーの前に涙をのんだ。


 ブレイディのパス、TEロブ・グロンカウスキーのキャッチ、シーホークスの堅守、RBマーション・リンチのパワフルなランと見どころが満載で、期待通りの好ゲームとなったが、その陰には無名選手の目を見張るような活躍もあった。


 ペイトリオッツの勝利を決定的にしたインターセプトを演じたのは、ドラフト外入団の新人Sマルコム・バトラーだった。リンチのランでゴール前1ヤードに進んだシーホークスは、得意のランではなくパスプレーで逆転を狙う。


 プレー開始時点での残り時間は26秒。QBラッセル・ウィルソンは右サイドからスラントインするWRリカルド・ロケットをターゲットにした。
 しかし、エンドゾーン後方からパスコースに割り込む形で飛び出してきたバトラーがこれをインターセプト。この瞬間にシーホークスの連覇の夢は潰えた。


 試合後も疑問視されたこのプレーコールだが、ペイトリオッツのマット・パトリシア守備コーディネーターはリンチのランではなくパスを予想していた。そこで通常のゴール前ディフェンスよりもCBの数を一人多く投入した。その第3CB(ニッケル)に起用されたのがバトラーだった。


 WRロケットとジャーメイン・カースが縦に並ぶスタントフォーメーションを組んでいるのを見たバトラーは、レシーバーが交差することによってマンツーマンでカバーするディフェンダーが衝突することを狙う「ピックルート」だと読んだ。
 そして、ウィルソンの視線がロケット注がれているのを確認したあと、素早くパスコースに割って入り、ボールをキャッチしたのだった。


 実はこのプレーはバトラーにとっては汚名返上のチャンスでもあった。この二つ前のプレーでウィルソンからカースへの33ヤードのパスが通っていた。その時にカースをカバーしていたのがバトラーだった。
 カースとの競り合いのなかでジャンプしてパスをカットしたバトラーだったが、ボールはフィールドに倒れ込むカースの脚に当たって再び跳ね上がる。この時点でボールはまだデッドになっていない。カースは倒れたままボールを確保して奇跡的なキャッチをしたのである。


 誰もが7年前のスーパーボウルを想起したことだろう。レギュラーシーズン16戦全勝でスーパーボウルにまで進出したペイトリオッツは、終盤までジャイアンツをリードして無敗のまま優勝する「パーフェクトシーズン」まであと数分というところまで来ていた。


 ところが、ジャイアンツのQBイーライ・マニングがパスラッシュを回避して投げた起死回生のロングパスをWRデービッド・タイリーが両手とヘルメットで挟むようにしてキャッチ。これがジャイアンツの逆転TDに結びついた。しかも、舞台は今回と同じアリゾナ州グレンデールのフェニックス大学スタジアムだった。


 タイリーとカースのプレーはキャッチしたレシーバーを称賛すべきで、ディフェンダーを攻めるのは酷だ。しかし、バトラーはこのままシーホークスに逆転負けを許したらそれは自分の責任だと思った。だからこそ思い切ったプレーで取り返そうと考えたのだ。


 大舞台でミスをしたら萎縮してしまうのが普通だ。しかも、バトラーはまだ先発経験が1度しかない経験の浅いルーキーだ。しかし、十分なスカウティングと準備が無名の新人をビッグプレーメーカーに育て上げたのだ。試合後、バトラーは次のように語った。
 「ビッグプレーをする予感はあったんだ。ただ、ここまでビッグなものとはさすがに想像してなかったよ」


 シーホークスでも「伏兵」の活躍があった。WRクリス・マシューズだ。4回のパスキャッチでチームトップとなる109ヤード、1TDをマークした。
 2012年から2年間カナディアンフットボールリーグ(CFL)でプレーし、新人王に輝いたレシーバーだが、NFLは今季が1年目。12月までは出場登録もされなかった。


 当然のごとく収入は少なく、アパレルショップと警備員の仕事を掛け持ちして食いつなぐ生活をしていた。ちなみにイーグルスやパッカーズで活躍したDEレジー・ホワイト(故人)の従弟にあたるのだそうだ。


 彼の名が知られるようになったのはNFC決勝でオンサイドキックをキャッチしたためだ。登録はWRだが、スーパーボウル以前はスペシャルチームで出場するのみで、オフェンスの記録は皆無だった。


 マシューズ本人もスーパーボウルでオフェンスの一員としてプレーするとは予想していなかったそうだ。しかし、195センチ超の身長のマシューズは、WRに駒が少ないシーホークスでは魅力的な存在だった。


 ペイトリオッツにとってもノーマークな存在だったのだろう。マシューズには先発CBダレル・リービスでも、ブランドン・ブラウナーでもなく、178センチと小柄なカイル・アーリントンをマッチアップさせた。
このサイズのミスマッチをウィルソンは逃さなかった。4回のパスキャッチのうちアーリントンがカバーした2回はいずれも44ヤード、45ヤードのロングパスとなった。


 シーホークスにとっては予想外の新戦力誕生だった。ただし、彼の台頭が皮肉な結果を生むことになる。アーリントンのパスカバーに問題ありと判断したベリチックは彼を下げて別の人材をニッケルCBとして投入する。それがバトラーだった。
 劇的な幕切れには無名選手の台頭とそれによって生まれる伏線が潜んでいた。必然と偶然が重なりあうのもまた勝負の綾だ。

【写真】試合終了間際にパスをインターセプトするペイトリオッツのDBバトラー(AP=共同)