NFLで実績のあるHCは、シーズン中におけるチームの修正や新戦力の活用、若手選手の育成がうまい。シーズン序盤でつまずいたとしても、セルフスカウティングによって矯正すべき部分を正確に洗い出し、課題を一つ一つクリアしていく。気がつけば勝ち星が積み上がり、プレーオフが始まる頃には戦力が充実しているものだ。


 ペイトリオッツのビル・ベリチックHCはそのいい例だ。今季は開幕週でドルフィンズに敗れるなど2勝2敗のスタートと出遅れた感があった。しかし、強豪ブロンコスとコルツを相次いで破って6連勝、現在はAFCトップの8勝2敗の好成績を残している。
 もう一つ、シーズン中盤にきて調子を上げているチームがある。アンディ・リードHC率いるチーフスだ。


 リードはイーグルスのHCだった1999~2012年に6度の地区優勝を含む9回のプレーオフ進出を経験し、うち5シーズンでNFC決勝にまで駒を進めた名将だ(2004年にはスーパーボウル出場したが、ペイトリオッツに敗れた)。
 昨年からチーフスの指揮官となった。昨季は開幕から9連勝と好調で、一昨年はわずか2勝しかできなかったチームを11勝5敗にまで引き上げ、プレーオフにも出場した。


 今季のチーフスは0勝2敗のスタート。リード就任直後にトレードやFA選手の獲得で大金を使ったこともあって、オフには弱点のWRなどを補強することができなかった。それが災いして、昨年の勢いはすでになくなったかと思われた。


 しかし、第11週にはスーパーボウル王者のシーホークスを24―20で破って5連勝。通算成績を7勝3敗として、AFC西地区でブロンコスと並ぶ首位タイの座に上った。
 ただし、第2週の直接対決でブロンコスが1勝しているから、現状ではブロンコスがタイブレークのアドバンテージを握っている。


 パス全盛期の現代NFLにおいてチーフスは異色の存在だ。オフェンスの核はRBジャマール・チャールズのラン。堅実な守備とランによるボールコントロールのコンビネーションで試合に勝つというスタイルを貫いている。シーホークスに勝った試合はいかにもチーフスらしかった。


 チャールズは159ヤードラッシングで二つのTD。QBアレックス・スミスはわずか16回のパス試投で11回の成功、108ヤード獲得という成績だ。例えばパッカーズのアーロン・ロジャースの36試投で22回成功、341ヤード、3TDという内容と比べると大きな差だ。


 ミスを少なくして、チームのプレーメーカーの能力を引き出してオフェンスを率いるのがスミスの持ち味だ。それがアグレッシブにターンオーバーを狙ってくるシーホークスには効果があった。
 ディフェンスは第4Qに3度もシーホークスのフォースダウンギャンブルを阻止した。パワーランナーのマーション・リンチが幾度もノーゲインに抑えられた。


 DTドンタリ・ポーは巨体を活かしてDLの中央を固め、OLBタンバ・ハリとジャスティン・ヒューストンがアウトサイドからのパスラッシュでQBにプレッシャーを掛ける。10試合を消化して、今季まだラッシングTDを一つも許していないこのディフェンスはチーフスの大きな武器だ。


 オフェンスには珍記録もある。WRによるTDがまだないのだ。もちろん、今季のNFLではチーフスだけ。2009年にブラウンズが9試合目までWRのTDがなかったが、それはすでに抜いてしまった。
シーズンを通してWRが一つもTDを記録しなかったチームは3例あるそうだが、いずれも1960年代以前のこと。当時はTフォーメーションからのラン全盛の時代で、パスはほとんど使われていなかった。現代におけるWRのTDゼロはやはり珍しい。


 このチーフスにとっては最終の6試合が正念場だ。ブロンコス、カージナルス、スティーラーズ、チャージャーズとの対戦を控えるからだ。
 昨年に続くプレーオフ進出を果たすためにはこの6戦で4勝以上は獲得したい。まずは第12週に対戦するレイダーズ(0勝10敗)には確実に勝っておきたい。


 第12週は強豪同士がぶつかり合う好カードが登場する。
 ▽ライオンズ(7勝3敗)@ペイトリオッツ(8勝2敗)
 ライオンズはカージナルスとの対戦に敗れて3敗目を喫した。パッカーズとNFC北地区で首位に並ばれてしまった。連敗は許されず、是が非でもペイトリオッツに勝ちたい。
 ペイトリオッツは意外にもランを中心としたオフェンスの組み立てでコルツを倒した。ただし、ダムコング・スー、ニック・フェアリーといった強力DLを擁するライオンズ相手ではそう簡単にランは出ない。パスを織り交ぜたバランスアタックが必要となるだろう。
 ライオンズ自慢のWR、「メガトロン」ことカルビン・ジョンソンとペイトリオッツが誇るシャットダウンCBダレル・リービスのマッチアップも注目だ。


 ▽ベンガルズ(6勝3敗1分)@テキサンズ(5勝5敗)
 ベンガルズはアンディ・ダルトンがセインツ戦でパサーレイティング143・9をマークするなど復調の兆しが見える。一方のテキサンズはライアン・マレットが2度目の先発出場。両QBの対戦がポイントだ。
 テキサンズのJ・Jワットの活躍にも期待したい。DEとしてQBにプレッシャーを与えるだけでなく、TEとしてオフェンスに加わってTDキャッチも見せる。今季のMVP候補にもあげられている、注目のプレーメーカーである。


 ▽カージナルス(9勝1敗)@シーホークス(6勝4敗)
 NFC最高成績を維持しているカージナルスが、いよいよ同地区ライバルでスーパーボウルチャンピオンのシーホークスと直接対決だ。カージナルスが史上初のホームチームのスーパーボウル出場という偉業を成し遂げるためにはどうしても倒さなければいけない相手だ。
 一方のシーホークスは逆転の地区優勝に望みをつなぐためには勝ってカージナルスとの差を縮めたい。残り6試合でゲーム差3を逆転するのは難しい。
 しかし、今回と第16週にもう一度ある直接対決で2勝しておけば、最終勝敗数が並べはタイブレークで優位に立てる。逆にどちらか一つでも落とせば地区優勝は大きく遠ざかる。

【写真】好調チーフスのアンディー・リードHC(AP=共同)