今季のNFLの特徴の一つは、長くプレーオフから遠ざかっているチームに低迷脱出の兆しが見えることだ。


 2002年シーズンを最後にプレーオフ出場がないブラウンズは第10週に地区ライバルのベンガルズを24―3で破って6勝3敗とし、AFC北地区の首位に立った。
 オフェンスは3人のRBベン・テイト、テランス・ウエスト、イザイア・クローウェルのラン攻撃が強力で、それを背景にQBブライアン・ホイヤーがミスの少ないゲームマネジメントを見せる。


 ディフェンスはSドンテ・ウィトナー、LBカルロス・ダンズビーといった移籍選手が活躍し、補強が成功したことをうかがわせる。OLBポール・クルーガーは6・0サックで2年前のレーベンズ在籍時代にスーパーボウル優勝に貢献した実力を発揮している。


 プレーオフに縁のない期間が最も長いのがビルズの14年。つまり、21世紀に入ってまだポストシーズンの経験がない。そのビルズはチーフスに13―17敗れたものの、5勝4敗でドルフィンズと並ぶAFC東2位タイで、首位のペイトリオッツ(7勝2敗)を追う。


 5年ぶりのプレーオフ出場を狙うカウボーイズはエースQBトニー・ロモが背中の故障から復帰し、ロンドンのウェンブリースタジアムで開催された国外試合でジャガーズに勝利して7勝目(3敗)。
カウボーイズと並走するイーグルス(7勝3敗)は2年ぶりの先発出場となった控えQBのマーク・サンチェスがコントロールのいいパス攻撃で難敵パンサーズを降し、ニック・フォールズ欠場の穴を感じさせなかった。


 そのほか、WRカルビン・ジョンソンが4試合ぶりに復帰したライオンズ(7勝2敗)がドルフィンズを倒して連勝を4に伸ばし、それを追うパッカーズ(6勝3敗)はNFL最古のライバル関係にあるベアーズに55―14で完勝した。


 現在、リーグで最高勝率を誇るのがカージナルス(8勝1敗)だ。スーパーボウル王者シーホークス、過去3年連続でNFC決勝に駒を進めている49ersと同じNFC西地区所属で苦戦も予想されていたが、強豪のイーグルス、カウボーイズを連破するなど好調だ。
 今シーズンのスーパーボウルはカージナルスの本拠地フェニックス大学スタジアムで行われるから、史上初のホームチームのスーパーボウル出場の夢も膨らむ。


 このカージナルスの強さの秘密はどこにあるのか。
 スタッツを見ると興味深いことがわかる。トータルオフェンスはリーグ24位とむしろ不調だ。特にランオフェンスは29位で振るわない。その一方で得点は1試合平均24・8点でリーグ12位。タイム・オブ・ポゼッション(ボール所有時間=オフェンスの時間)は平均30分44秒で9位と好成績だ。


 ディフェンスはランが3位(1試合平均78・6ヤード)に対してパスが30位(274・2)と両極端だ。しかし、単純な距離の合計で表される順位ではなく、試合の結果に直結する失点では18・9点で4番目に少ない。これらのデータからどのようなことが読み解けるのか。


 カージナルスのランディフェンスはNTダン・ウィリアムズ、DEカレイス・キャンベルといったDLがOLのブロックを食い止め、LBアレックス・オケイフォー、ケビン・ミンターがランニングレーンをつぶすというスタイルをとる。
 これが効果的で、カウボーイズのRBデマルコ・マレーも第9週の対戦では今季初めて100ヤードラッシュを達成できなかった。


 オフェンスはランディフェンスの強いチームに対してパスで攻略しようとする。そのため、必然的にパスで獲得される距離が多くなり、パス守備の順位が下がることになる。しかし、それが必ずしも失点につながっていないところにカージナルスの強さがある。


 ラン守備が堅いとサードダウンで長い距離が残りやすい。「サードダウンロング」の場面はディフェンスに有利で、QBサックやインターセプトの狙い目でもある。CBにパトリック・ピーターソン、アントニオ・クロマティというパス守備の名手がおり、新人Sディオン・ブキャノンの成長も目覚ましいセカンダリー陣はこの状況で力を発揮する。
 結果的にサードダウンで相手にファーストダウン更新させない確率が高くなり(8位)、失点を防げるのだ。


 オフェンスはもともとランでゲインを重ねるようには構築されていない。最大の武器は豊富なレシーバー陣だ。プロボウル常連のWRラリー・フィッツジェラルドに加え、成長著しいマイケル・フロイド、新人のジョン・ブラウンなどビッグプレーを生み出す能力のある選手がそろう。
 そこに、パスの得意なQBカーソン・パーマーが加わったことでロングパスを多用するオフェンスが使えるようになった。過去にベンガルズやレイダーズで先発を務めたパーマーにとっても、これほどまでに有能なレシーバーが揃ったチームはほとんど経験がなかった。


 ブルース・アリアンズHCはパスによるオフェンス構築を好む。それに必要な人材がオフェンスにそろったことで理想的なチームが出来上がったと言っていいだろう。かつてコルツで攻撃コーディネーターとして、ペイトン・マニングと一緒に強力なパスオフェンスを作ったトム・ムーアがオフェンスの特別コーチとして参加しているのも心強い。


 ただし、カージナルスは今最大のピンチに直面している。今季6戦全勝だったパーマーが第10週のラムズ戦でサックを浴びた時に膝の靱帯を断裂して今季絶望となった。今後は2番手のドルー・スタントンが先発QBを務める。


 スタントンはパーマーが肩の負傷で欠場した3試合に先発して2勝1敗の成績を残した。パーマーほどロングパスの精度が高くないものの、ミスの少ないクオーターバッキングでチームを引っ張る。
しかし、今後のカージナルスはライオンズ、シーホークス(2回)、チーフス、49ersといった強敵との対戦を控える。スタントンがこの苦しい状況を乗り越えられるか、正念場だ。


 それでは、来週の注目カードを紹介しよう。
 ▽ビルズ(5勝4敗)@ドルフィンズ(5勝4敗)
 ともに同地区でペイトリオッツを追うなかで2番手争いの直接対決となる。いずれも第10週には負けているので連敗は避けたいところだ。この2チームは寒冷地のニューヨーク市バファローを本拠地とするビルズと温暖なマイアミにホームを構えるドルフィンズの気候を味方につけたライバル関係でも知られる。
 伝統的にホームでの戦いに強い両チームだが、最近の対戦ではビルズが4勝1敗と優位に立っている。ビルズのDTマーセル・ダリウス、ドルフィンズのDEキャメロン・ウェイクのパスラッシュにも注目だ。


 ▽シーホークス(6勝3敗)@チーフス(6勝3敗)
 両カンファレンスを代表する好調チームの対戦だ。チーフスのQBアレックス・スミスは49ers在籍時代に何度もシーホークスと対戦して手の内はわかっている。得意のクイックリリースによるパスでシーホークスのアグレッシブなパスラッシュを避けたい。
 チーフスの本拠地アローヘッドスタジアムはクラウドノイズが激しいことでも知られる。いつもは自分たちのホーム・センチュリーリンクフィールドでファンを味方につけるシーホークスが、8年ぶりに訪れるカンザスシティのノイズにどう対応するか。


 ▽ライオンズ(7勝2敗)@カージナルス(8勝1敗)
 NFCの頂上決戦が実現する。第5週以来の先発となるカージナルスのスタントンがリーグトップのライオンズディフェンスをいかに攻略するか。そして、QBマシュー・スタッフォードとWRジョンソンのホットラインとカージナルスセカンダリー陣のマッチアップはどちらが勝つか。見どころ満載のゲームとなる。


 ▽ペイトリオッツ(7勝2敗)@コルツ(6勝3敗)
 昨年のディビジョナルプレーオフの再戦だ。この試合ではコルツのQBアンドルー・ラックが四つの被インターセプトと乱調で試合を壊し、22―43と完敗した。コルツはそのリベンジを果たすとともにAFCのシード争いでペイトリオッツ、ブロンコスと並びたい。ともにバイウィーク明けで休養と相手の分析は十分だ。


 ▽イーグルス(7勝2敗)@パッカーズ(6勝3敗)
 こちらもプレーオフでのシード順を占う上で重要な対戦となる。パッカーズのQBアーロン・ロジャースはレイティングがリーグトップの120・1と好調で、ようやく彼本来の力を出してきた。ジョディ・ネルソン、ランドール・コッブといったレシーバー陣も安定感があり、シーズン終盤に向けて調子を上げている。
 イーグルスはQBサンチェス次第と言っていい。前週のパンサーズ戦のようなピンポイントのパスを成功させれば激しい点の取り合いが見られるだろう。

【写真】好調カージナルスのエースWRフィッツジェラルド(AP=共同)