ファンには申し訳ないが、NFLの今シーズン序盤の最大のサプライズはカウボーイズの躍進だ。第6週にはスーパーボウルチャンピオンのシーホークスを破ってさらに評価を上げた。5勝1敗はチャージャーズ、イーグルスと並ぶNFL最多勝利数だ。


 開幕前はほとんど注目されていなかった。昨年まで3年連続で8勝8敗。これはNFLの長い歴史でもわずか3例目という非常に珍しいケースだ。しかも、いずれも最終週の試合に勝てばプレーオフ進出決定という状況にありながら、よりによってディビジョンライバルとの試合に敗れてシーズン終了を迎えてきた。
 「アメリカズチーム」としてファンの期待が大きいだけに失望感も強く、ジェーソン・ギャレットHC解雇のうわさも流れた。


 目を引くのは好調なランオフェンスだ。RBデマルコ・マレーが史上2人目となる開幕から6試合連続での100ヤード以上のラッシュを達成し、1試合ごとのラン獲得距離もNFL1位だ。
 そのランオフェンスを支えるのがタレントぞろいのOLだ。Cトラビス・フレデリック(昨年)、RGザック・マーチン(今年)、LTタイロン・スミス(2011年)とドラフト1巡指名選手が3人も名前を連ねる。


 いずれも機動力があり、ダウンフィールドブロックが得意だ。シーホークス戦ではプルアウトしたOGやOTが素早くフィールドを駆け上がり、CBリチャード・シャーマンやFSアール・トーマスをブロックして走路をこじ開けた。
 シーホークスは強力なセカンダリー陣を誇るが、OLのランブロックにあってはさすがにひとたまりもなかった。


 QBトニー・ロモとWRデズ・ブライアントのコンビもビッグプレーを生んでいる。ロモと言えば「持っていないQB」とネガティブなイメージが定着している。
 2006年のプレーオフで彼がトライフォーポイントのキックでホールドをミスした映像は今でも紹介されるし、重要な試合になるほど独り相撲を取ってしまって墓穴を掘ることも多かった。
 しかし、一昨年ごろからパサーとして安定感を増してきた。今季はマレーのランをうまく使うことでしっかりとしたゲームマネージメントをしている。若い頃のように不用意なパスを投げることが少なくなり、円熟期に入ったと言っていいだろう。


 ブライアントは自他ともに認めるエースレシーバーに成長した。難しいロングパスをディフェンダーとの競り合いの中でキャッチするダイナミックなプレースタイルは魅力的だ。何よりもサードダウンで確実にパスキャッチをする安心感がある。
 カウボーイズがサードダウンコンバージョンでダウン更新率がトップなのはロモとブライアンとのコンビネーションによるところが大きい。


 ディフェンスの改善も特筆すべきだ。昨年は、かつてバッカニアーズで名参謀として鳴らしたモンテ・キフィンを守備コーディネーターに招聘し、伝統的な3―4守備から4―3に転換した。
 しかし、パスラッシャーのデマーカス・ウェアがOLBからDEへのコンバートで不振に陥り、さらに故障欠場でディフェンス全体の低迷を招いた。終わってみれば喪失距離でチームのワースト記録を作ってしまった。


 今季はキフィンを降格処分とし、ロッド・マリネリをコーディネーターに昇格させた。マリネリは4―3守備を維持しながらも積極的にブリッツを採用し、それが効果を発揮している。
 ウェアはブロンコスへと移籍したが、DTニック・ヘイデンとヘンリー・メルトンがスクリメージラインをコントロールし、LBジャスティン・デュラン、MLBローランド・マクレーンらがプレーメークするというスタイルが定着した。マンツーマンを主体とするセカンダリーのパス守備も堅い。


 1995年シーズン以来となるスーパーボウル優勝への期待が膨らむが、不安材料も少なくない。そのひとつは主力選手のダメージだ。ロモはギリギリまでターゲットとなるレシーバーを探し続けるため、パスを投げた後にディフェンダーからのヒットを受けることが多い。オフには背中の手術を受けたばかりで、蓄積するダメージが懸念される。


 また、マレーの使い過ぎも心配だ。6試合で159回ものボールキャリーをしている。これは年間424回のペースで、NFL記録を上回る。カウボーイズはバックアップ選手の出場機会を増やすことでマレーのスタミナ温存を図る方針だが、2番手のジョセフ・ランドルが万引きで逮捕されるという不祥事を起こし、暗い影を落としている。
 RGダグ・フリーが足の骨折で少なくとも3、4週間は戦列を離れる見込みで、その影響は必至だ。


 カウボーイズにとっての天王山はイーグルスと対戦する第13週(11月27日)と15週(12月14日)だ。3週間で2回対戦する厳しいスケジュールだが、NFCイーストの地区優勝、さらにはプレーオフにおけるNFCのシード順位を争う大事な試合となる。


 2014年シーズンも中盤に差し掛かった。第7週は3勝3敗で勝率5割の5チーム(テキサンズ、スティーラーズ、ビルズ、ベアーズ、ジャイアンツ)に注目したい。プレーオフ進出を目指すならこのあたりで上昇気流に乗りたいからだ。
 テキサンズとスティーラーズは直接対決だ。テキサンズはカウボーイズ、コルツと接戦を演じながら2連敗中。これ以上の負けは避けたい。
 一方のスティーラーズはここまで勝ちと負けを繰り返す展開だ。ディフェンスにかつてのような堅固さがなく、失点が多い。両チームにとってプレーオフ戦線に生き残る重要な試合となる。


 ビルズは地元ラルフ・ウィルソンスタジアムにバイキングズ(2勝4敗)を迎える。バイキングズの新人QBテディ・ブリッジウォーターにとっては、これがロードでの初先発試合。対するビルズはベテランのカイル・オートンが今季3試合目の先発出場。NFC勢相手にすでに2勝しているビルズが有利か。


 ベアーズはドルフィンズ(2勝3敗)とホームで戦う。ドルフィンズのジョー・フィルビンHCは元パッカーズの攻撃コーディネーターで、地区ライバルだったベアーズのディフェンス攻略法は熟知しているはず。バイキングズでは、既に3インターセプトを記録している新人CBカイル・フラーに注目。


 3連勝がストップしたジャイアンツはディビジョンライバルのカウボーイズと敵地で対戦する。最近4試合で1勝3敗と分が悪い。完封負けしたイーグルス戦のショックを振り払い、カウボーイズの勢いにストップをかけることができるか。

【写真】好調のカウボーイズのオフェンスを率いるQBロモ(AP=共同)