NFLは1シーズンでわずか16試合しか戦わないが、それでも全勝をするのは至難の業だ。過去に1回も負けずにスーパーボウル優勝を果たしたのは1972年のドルフィンズしか例がない。
 もっとも、当時はレギュラーシーズンが14試合制だったので現在よりも2試合少ない。現行制度では2007年にペイトリオッツが無敗のままスーパーボウルまで到達したが、残念ながらジャイアンツに敗れて「パーフェクトシーズン」は達成できなかった。


 今年は第5週を終了した時点で早くも全勝チームがなくなった。前週まで負け知らずだったベンガルズ(3勝1敗)とカージナルス(3勝1敗)がともに負けたためだ。
 チャージャーズ、イーグルス、カウボーイズが4勝1敗でリードし、15チームが3勝でその後を追う接戦となっている。


 八つのディビジョンがそれぞれに熾烈な地区優勝争いを展開しているが、なかでもAFCノースは激戦区となっている。所属する4チームが全て勝率5割以上なのはこの地区だけだ。
 暫定首位のベンガルズの後にレーベンズとスティーラーズが3勝2敗で続き、最下位のブラウンズも2勝2敗の五分だ(ベンガルズの試合数が少ないのはすでに1週間のオフを終えているため)。


 目立つのはブラウンズの健闘だ。過去5年はいずれも5勝以下と不振だったが、QBブライアン・ホイヤーの安定した活躍とリーグ4位のランオフェンスでディビジョンの底上げに一役買っている。
 ただし、勝敗表を詳しく見ていくとディビジョン内の対戦は0勝2敗、カンファレンス内(同じAFCチームとの対戦成績)では1勝2敗と苦戦しているのがわかる。


 これらの数字は地区優勝やプレーオフ枠を争う際に、同勝率のチームとのタイブレークの根拠となるものなので、残りの11試合で少しでも改善したい。
 第6週には宿敵スティーラーズとの対戦がある。開幕週に続き、2度目の対戦だ。前回の対戦では3―27の劣勢から追いついたが、オーバータイムの末に27―30で敗れた。今回はホームでの試合開催。勝ってリベンジを果たし、上位3チームとの差を縮めたい。


 NFCではイーストが面白い。昨年地区優勝のイーグルスとオフェンスが好調のカウボーイズが並走する。


 開幕当初はやや出遅れた感のあるジャイアンツが3勝2敗でこの2強を追う。今季から導入したウェストコーストオフェンスがようやく機能し始め、現在3連勝中だ。そのジャイアンツは次の2週で前半戦の山場を迎える。
 第6週にイーグルス、翌週はカウボーイズとの直接対決が控えるからだ。ともに敵地での試合なので苦戦を強いられる可能性もある。
 第8週はバイウィークで試合がないが、その後はコルツ、シーホークス、49ers、カウボーイズと強敵が立ちはだかる。


 さて、第5週には心温まるエピソードがあった。サンデーナイトゲームとして全米放送されたベンガルズ対ペイトリオッツの試合のことだ。
 ペイトリオッツのチアリーダーが試合前に対戦相手のベンガルズの75番のレプリカジャージを着て登場。これはそのナンバーを着用するベンガルズDTデボン・スティルと彼の4歳の娘リーちゃんに対するエールだった。


 リーちゃんは今年6月に小児がんと診断され、治療を続けている。その模様がテレビで放映されたため、全米から支援が集まっていた。その支援はNFLのライバルたちからも寄せられている。


 イーグルスのチップ・ケリーHCはリーちゃんにぬいぐるみと花を贈り、セインツのショーン・ペイトンHCはスティルのレプリカジャージを100着注文した。この売上げはベンガルズを通じてシンシナティ市のチルドレンホスピタルメディカルセンターに寄付される。


 そして、試合当日はジレットスタジアムの大きなスクリーンにリーちゃんと、その他のがんと闘う子どもたちに向けて特別のビデオメッセージが放映されたのだ。その映像を見たスティルの目には涙があふれていた。ペイトリオッツはさらにオーナーのロバート・クラフト氏がリーちゃんの名義で同メディカルセンターに2万5千ドルを寄付する粋なはからいも見せている。
 では、第6週の見どころを紹介しよう。


 ▽コルツ(3勝2敗)@テキサンズ(3勝2敗)
 開幕前はコルツの一人勝ちかと思われたAFCサウスだが、昨季わずか2勝のテキサンズが復活を果たし、優勝争いを演じている。その第1戦がこの試合だ。
 コルツのQBアンドルー・ラックはリーグトップの14TDパスと絶好調。RBトレント・リチャードソンがパスで貢献できるようになったためにラックのプレーの幅が広がり、それが得点力の高いオフェンスを支えている。このラックに対し、テキサンズが誇るパスラッシャーJ・Jワットがいかにプレッシャーを与えるかに注目が集まる。


 ▽ペイトリオッツ(3勝2敗)@ビルズ(3勝2敗)
 第5週にベンガルズに今季初黒星を与えて連敗を免れたペイトリオッツ。その試合内容はその前の4試合とは打って変わってペイトリオッツらしいものだった。
 TEロブ・グロンカウスキーが100ヤードレシーブと2TDパスキャッチで完全復調を感じさせた。スティーバン・リドリーを中心とするラン攻撃も好調だった。これでペイトリオッツが波に乗れるかどうかはこの試合しだいだろう。
 ビルズは例年とは違って白星が先行するなど元気がある。先発QBを2年目のE・Jマニュエルからベテランのカイル・オートンに代えたことが功を奏したようだ。ビルズも15年ぶりのプレーオフに出場するためには、この試合に勝って上位進出を狙いたい。

【写真】QBブレイディーのメインターゲットとなっているペイトリオッツのTEグロンカウスキー(AP=共同)