NFLのオーナーは気が短い。巨額の投資をしているのだからチームは短期間で強くなるのが当たり前と考え、何年もかけて優勝を目指すなどと悠長なことは許さない。意にそぐわなければHCであろうとGMであろうと容赦なく切り捨てる。


 今年もまだシーズンの4分の1が過ぎたばかりだというのに、早くもレイダーズのデニス・アレンHCが解任された。
 オフにRBモーリス・ジョーンズ・ドリュー、LBラマー・ウッドリー、QBマット・ショーブらベテラン選手を多く獲得したものの、開幕から4連敗。マーク・デービス・オーナーの堪忍袋の緒が切れた。


 もっとも、レイダーズは辛抱強くアレンを起用したほうだ。アレンは2012年シーズンに就任したが、過去2年はいずれも4勝止まり。昨季限りで解雇とのうわさも流れたが、デービスはアレンの続投を決断した。
 レイダーズの歴史の中で2年連続負け越したHCが解任されずに3年目を迎えるのはこれが初めてだった。レイダーズにしては珍しく寛大な処置だったのだが、実を結ぶことはなかった。


 OLコーチのトニー・スパラーノがHC代行となって今季の残りの試合の指揮を執る。スパラーノはドルフィンズでHCの経験があり、2008年には「ワイルドキャット旋風」を巻き起こしてAFCイーストの優勝を果たした。


 さて、第4週を終了して、この週がバイウィークで試合のなかったベンガルズ、ブラウンズ、ブロンコス、ラムズ、カージナルス、シーホークスを除く全チームが4試合を消化した。
 イーグルスに土がついたため、全勝チームはベンガルズとカージナルスの2チームだけとなった。昨年のこの時期にはまだ5チームが全勝を守っていたから、今年は昨シーズン以上にリーグ内の実力が拮抗しているとみていい。


 テキサンズとカウボーイズのテキサス勢が3勝1敗と好調だ。両チームともにシーズン前の評価は高くなかった。しかし、テキサンズは接戦をものにし、カウボーイズはリーグトップのランオフェンスで勝ち星を得ている。


 プレーオフの常連組ではペイトリオッツが早くも2敗を喫した。パスプロテクションが悪く、QBトム・ブレイディが得意のパスオフェンスを展開できない試合が続く。セインツ(1勝3敗)はディフェンスが大きな弱点だ。 


 この頃になると各チームの実力が勝敗の数にほぼ正確に反映されてくる。4試合を戦うとチームの長所と短所が如実に表れてくるからだ。
 連勝をするチームはやはり弱点が少ないものだし、勝ち星に恵まれないチームは昨年からの課題がクリアされていないケースが多い。そして、序盤の勢いが失速してくるのもこの時期だ。


 例えば、開幕2連勝の後に2連敗しているビルズはすでに序盤の勢いをなくした。QB、 EJマニュエルの乱調が敗因だ。マニュエルに安定感が欠けることはシーズン前から懸念されていたことで、不安が的中してしまった。
 つまり、弱点が克服されていなかったということだ。ビルズのオフェンス構想は2番手QBカイル・オートンを中心に練り直しが必要だ。今年こそ15年ぶりのプレーオフを、との期待が大きかっただけに残念だ。


 現在3連勝中のレーベンズ、チャージャーズ、カウボーイズ(第4週に試合のなかったベンガルズとシーホークスを除く)は今後も勝ち星を順調に伸ばしていくだけの力を蓄えているとみていい。
 反対に一進一退のスティーラーズ、パッカーズ、49ersは早めの修正をしないと地区ライバルに好調なチームがいるだけにプレーオフ戦線から脱落しかねない。


 とはいっても、シーズンは長い。主力選手の故障が戦力に影響を与える場合もあるし、思わぬ伏兵がエースとして台頭するケースだってある。好調のチームは油断禁物。不振のチームにもまだ修正は間に合う。


 今年のドラフトで1巡指名を受けた3人のQBのうちブレイク・ボートルズ(ジャガーズ)とテディ・ブリッジウォーター(バイキングズ)がそれぞれチームの正QBに昇格した。
 ボートルズは1TDパス成功に対し二つの被インターセプトを喫し、ジャガーズもチャージャーズに敗れた。ブリッジウォーターはTDパスも被インターセプトもなかったが、自身の13ヤードTDランなどで好調のファルコンズを破ってNFL初勝利をあげた。


 NFLの話題からそれるが、このところ関東大学アメリカンフットボールリーグが面白い。昨年までの1部2ブロック制が廃止され、昨年の戦績の上位8チームからなる「トップ8」とそれ以外の「ビッグ8」に分かれて、それぞれ実力が拮抗した大学同士の対戦が増えた。どちらも伝統的に続くライバル関係が全面に出ていて興味深い。


 甲子園ボウルにつながる全日本大学選手権トーナメントへの出場権を持つトップ8では毎節で熱戦が繰り広げられている。
 特に第3節(9月27、28日)は法政対慶応、日大対早稲田という全勝対決があった。法政と日大がそれぞれ勝って開幕から3連勝としたが、いずれも最後のプレーまで目が離せない展開の好ゲームだった。


 こうした魅力的な対戦カード、ハラハラする接戦がファンを呼び込まないはずがない。観客動員数は順調に伸びている。関東大学連盟の関係者は「(昨年比で)『何割増し』なんてものじゃないですよ。倍増ですよ」と胸を張る。
 そして、第3節を終了した現在でもシーズンチケットが売れているそうだ。今後は早慶戦、明治と日大、法政の対戦、そして日大と法政の直接対決など楽しみなカードが目白押しだ。


 これで関東勢の実力が伸び、2006年を最後に勝っていない甲子園ボウルで優勝することができれば新体制が真の成果を出すことになる。


 チーム同士の実力を拮抗させ、接戦を多くすることでファンを魅了するという基本理念はNFLにも共通している。NFLは古くから「パリティ(戦力均衡)」を重視し、チーム間の実力差に大きな開きが出ないような工夫を施してきた。
 前年度の成績の低いチームから優先的に新人選手を指名できる「完全ウェーバー制」の大学ドラフト、成績上位のチーム同士が対戦するスケジューリング、選手の移籍を促すために資格取得が3、4年と短いフリーエージェント(FA)制度、資金の豊富なチームに有能な選手が集まることを防ぐサラリーキャップなどは、いずれもチーム間の戦力を可能な限り均衡に保つための制度だ。
 さらに地域性を重視した地区制度でライバル関係をあおり、ファン同士の対抗意識も高める。これが全米でトップの人気を誇るプロスポーツを生んだ理由の一つなのである。


 それでは、NFL第5週の注目カードを紹介しよう。
 ▽テキサンズ(3勝1敗)@カウボーイズ(3勝1敗)
 好調な2チームによる「テキサスダービー」が実現する。現在534ヤードラッシングでNFLトップのRBデマルコ・マレーのランをテキサンズ守備がどう攻略するかが鍵だ。テキサンズはDE、J・Jワットに注目。強烈なパスラッシュでQBトニー・ロモにプレッシャーをかける。


 ▽レーベンズ(3勝1敗)@コルツ(2勝2敗)
 若きスターQBQBアンドルー・ラックとレーベンズの堅い守備のマッチアップが注目だ。ラックはWRレジー・ウェイン、T・Yヒルトンをメインターゲットにパス攻撃を構築。リーグ6位のレーベンズのパスディフェンスとの真っ向勝負だ。


 ▽カージナルス(3勝0敗)@ブロンコス(2勝1敗)
 今季絶好調のカージナルスが最大の難敵ブロンコスと対戦する。QBペイトン・マニングのパスを封じ込めることが4連勝への条件だ。カージナルスのHCブルース・アリアンズはコルツでマニングのQBコーチを務めた経験がある。攻略の糸口を見いだせるか。


 ▽ベンガルズ(3勝0敗)@ペイトリオッツ(2勝2敗)
 いつになくスロースタートなペイトリオッツがここまで負けなしのベンガルズと対戦。第4週に続き、この試合も落とすようだとAFCイーストで長く王座を維持してきたペイトリオッツに暗い影が差す。もっとも、最近5試合で4勝と相性はいい。ベンガルズは、プレーオフ常連組との対戦が苦手という弱点をこの試合に勝って克服したい。

【写真】今季、早くも2敗を喫したペイトリオッツのベリチックHC(AP=共同)