スーパーボウル王者のシーホークスに早くも土がついた。開幕週で強豪パッカーズを全く寄せ付けない強さを見せたディフェンディングチャンピオンだったが、チャージャーズには21―30と苦杯をなめた。チャージャーズはいかにしてシーホークスを攻略したのか。


 この試合のチャージャーズはショートパスを中心にオフェンスを組み立てる作戦が徹底していた。QBフィリップ・リバースは3歩のドロップバックから素早く投げるショートパスを多用し、シーホークスのパスラッシュによるプレッシャーをうまく回避した。
 パスターゲットとなったのは3TDパスキャッチのTEアントニオ・ゲイツだけでなく、WRエディ・ロイヤル、トーレンス・アレン、RBダニー・ウッドヤードと多くの選手に投げ分けた。


 ショートパス中心の組み立ては一気に大きな距離を稼げない代わりに、高い確率で3~5ヤードをゲインすることができる。大事なサードダウンでは5ヤード以上が残る「サードダウンロング」の場面が少なくなり、ファーストダウン更新が容易だ。
 その結果、一つのドライブの時間が長くなり、クロックコントロールを可能にすると同時にディフェンスのスタミナを奪うことができる。


 チャージャーズの6回の得点ドライブのうち、前後半の2ミニッツを除く4回はいずれも4分を超えるドライブでトータルのタイムオブポゼッションは42分15秒に及んだ。
 ほぼ3クオーター分に近い時間でボールを独占していたわけで、これがQBラッセル・ウィルソンとRBマショーン・リンチ率いるオフェンスの得点機会を奪う効果があった。


 先制したのはチャージャーズだった。シーホークスの最初の攻撃をパントに追いやった後、8分のドライブでニック・ノバックが50ヤードのFGを成功させた。
 昨年は相手チームの最初のオフェンス機会で一度もなかった失点。シーホークスのディフェンスが序盤からほころびを見せた。もっとも、シーホークスにミスがあったわけではなく、リバースがフラットやフックゾーンといったディフェンスの「穴」をうまく攻略するパスを投げて小さなゲインを重ねていった結果だった。


 シーホークスはすぐに反撃に転じる。ウィルソンからハンドオフを受けたWRパーシー・ハービンが俊足を生かしてエンドアラウンドによる51ヤードのTDランを決める。
 7―3と逆転に成功してモメンタムを引き戻したかに見えたシーホークスだったが、チャージャーズは直後のオフェンスでゲイツが8ヤードのTDレセプションで再びリードを奪う。


 このゲイツへのパスはアウトサイドコーナーを狙ったものだ。シーホークスはFSアール・トーマスのみをディープゾーンに置いて、それ以外の選手がショートからミドルのエリアを守る「シングルハイ」をよく使う。
 CBのマンカバー能力が高く、トーマスの守備範囲が広いからこそ可能となる守備方法だが、このパスでは裏目に出た。シングルハイではアウトサイドコーナーを守る選手がいないので、ここに大きなスペースが生まれる。
 CBはそこにWRが走り込まないようにアウトサイドのエリアを堅実に守り、レシーバーをインサイドに向かわせようとするのがセオリーだ。


 ところがこのプレーではゲイツがWRの位置にセット。マンツーマンでカバーするSSキャム・チャンセラーをあっという間にアウトサイドに抜き、ワイドオープンとなった。弱点であるアウトサイドコーナーを長身のゲイツに攻められては、さすがのシーホークスも打つ手がなかった。


 この逆転TDを許したころから、シーホークスにミスが目立つようになる。ウィルソンはQBサックを受けた際にボールをファンブル。これはシーホークスが押さえたが、チャージャーズがFGで加点をした直後のキックオフではリターナーのハービンがファンブルしてターンオーバー。ゲイツのこの日2本目のTDキャッチのお膳立てをしてしまった。


 それでも、残り1分で始まった前半最後のオフェンスできっちりとTDをとって14―20としてハーフタイムを迎えたのは、さすが王者の風格だった。
 後半に入ってもチャージャーズのオフェンスは好調だった。前週にシーホークスと対戦したパッカーズのQBアーロン・ロジャースはシャーマンのサイドに1回もパスを投げなかったが、リバースはあえてシャーマンと対峙するロイヤルにもパスを投じた。
 その結果、ロジャースとは違ってフィールド全体を使うことができ、それもシーホークスの守備に的を絞らせない効果があった。


 第3クオーター残り3分1秒でゲイツが21ヤードのTDパスキャッチで27―14とすると、ここからはランプレーを中心に切り替えてボールコントロールを始めた。本来ならランにも強いシーホークスディフェンスだが、フィールドに出ている時間が長かったため疲労の色が濃く、精彩を欠いた。
 第3クオーター残り3秒で、ウィルソンからリンチへの14ヤードパスで6点差にまで迫ったシーホークスだが、オフェンスの反撃もここまで。最後は自陣奥深くでのフォースダウン失敗によるターンオーバーで、チャージャーズにだめ押しのFGを許して試合終了となった。


 このほかの試合では、シーホークスのライバルの49ersがベアーズに敗れ、1勝1敗となった。カージナルスはジャイアンツを25―14で下して開幕2連勝。激戦地区と予想されるNFCウエストで首位に立っている。


 ベンガルズ、パンサーズ、ブロンコス、イーグルスといった昨年のプレーオフ出場チームは順調に2勝0敗としている。一方で、過去14年間プレーオフから遠ざかっているビルズと、昨年の2勝14敗からの巻き返しを図るテキサンズが2連勝と好調だ。プレーオフの常連であるセインツは2連敗と苦しんでいる。


 さて、第3週はいよいよ昨年のスーパーボウルの再戦が行われる。痛い1敗を喫したシーホークスが地元センチュリーリンクフィールドに開幕2連勝のブロンコスを迎える。
 昨年のスーパーボウルではリーグ1位同士のオフェンス(ブロンコス)対ディフェンス(シーホークス)という絶好のマッチアップとなった。
 今回も、基本的にブロンコスオフェンスとシーホークスディフェンスの対決が見どころとなるが、逆の対戦も注目だ。というのも、スーパーボウルで8―43と大敗したブロンコスは、その反省をもとにディフェンスに大型補強を施して今季に臨んでいるからだ。


 新加入のDE/OLBデマーカス・ウェア、CBアキーブ・タリブ、SのT・Jワードらは期待通りの働きをしている。ブロンコスの新ディフェンスがシーホークスオフェンスをいかに抑えるかも注目のポイントだ。


 シーホークスに勝って波に乗るチャージャーズは、好調のビルズと敵地で対戦。チャージャーズはRBライアン・マシューズが膝の靱帯負傷で1カ月の戦列離脱となるが、その影響がどう出るかはこの試合で明らかになる。
 ビルズは昨季からパスラッシュが飛躍的に向上している。そのディフェンスとリバースのせめぎあいが見どころだ。
 直接対決に勝って、開幕3連勝するとともに地区優勝争いで優位に立ちたいカージナルスと、連敗は避けたい49ers。自慢のディフェンスに不安がある49ersが、いかに辛抱して試合を展開させるか。NFCウエストの序盤戦の大きな山場となる試合だ。

【写真】勝利に大きく貢献したチャージャーズのTEゲイツ(AP=共同)