今年のNFLシーズン開幕は、例年以上にチームの仕上がりに差が見えた。昨年優勝のシーホークスはディエンスが相変わらずアグレッシブで堅く、対戦したパッカーズのパスオフェンスを見事に封じた。
 オフェンスもRBマショーン・リンチの力強い走りは健在で、QBラッセル・ウィルソンもランとパスを上手に使い分ける技術を身につけてきた。


 スーパーボウル制覇に向けて積極的な補強を行ったブロンコスは新加入のDEデマーカス・ウェアやCBアキブ・タリブらが目立つ活躍を見せ、チーム作りが順調に進んでいることをうかがわせた。


 一方で、QBロバート・グリフィン3世をポケットパサーとして再生しようと試みるレッドスキンズにはその成果が見られなかった。
 開幕直前にエースQBサム・ブラッドフォードが膝の靭帯断裂で今季絶望となったラムズは代役のショーン・ヒルと彼の故障後に登場したオースティン・デービスがともに不調で、QB問題が深刻であることが露呈した。


 いくつかのチームで早くも故障者が続出し、コルツのエースOLBで昨年リーグ最多の19・5サックを記録したロバート・マシスが、個人で行っていた練習中にアキレス腱を断裂して今季絶望。注目のドラフト全体1位指名の新人ジェディボン・クラウニー(テキサンズ)が半月板損傷で約1カ月の欠場が見込まれている。
 また、レーベンズでエースRBとして活躍したレイ・ライスがエレベーター内で夫人(事件当時は婚約中)を殴打する映像が発覚。事態を重く見たチームは解雇を決定し、NFLも7月に決定した2試合の出場停止処分を無期限に延期した。
 ライスが将来どこかのチームと契約して復帰する道はまだ残されているが、無期限の出場停止処分がシーズン中に解かれるケースは稀で、早くても来季以降になる見込みだ。


 第1週の最大の波乱といえば、ドルフィンズが地区ライバルのペイトリオッツを破った試合だろう。ペイトリオッツが開幕戦を落とすのは2003年以来のことだ。
 前半は20―10でリードしていたペイトリオッツだったが、後半は完封され、20―33で完敗した。


 ドルフィンズはランオフェンスが好調だった。FAで獲得したRBノーション・モレノ(前ブロンコス)が24回のボールキャリーで134ヤード、1TDの活躍。昨年、チームメートに対する嫌がらせ問題の影響で退団者が多く出て人員が入れ替わったOLは、新加入のLTブランデン・アルバート(前チーフス)を中心に急造とは思えないほどのまとまりを見せてモレノの走路をこじ開けた。
 ディフェンスはDEキャメロン・ウェイクが2サックと大暴れ。コンスタントにペイトリオッツのQBトム・ブレイディにプレッシャーをかけ、ロングパスをほぼ完璧に封じ込めた。


 この試合を見て気になったのは、ペイトリオッツの攻守ラインの弱さだ。OLはドルフィンズのパスラッシュに簡単にポケットを破壊され、逃げ場を失ったブレイディがサックされてファンブルするシーンが2回もあった。DLはランを止めることができず、ドルフィンズにクロックコントロールを許した。


 ブレイディの不調も目に余った。新加入のブランドン・ラフェルや2年目のケンブレル・トンプキンズのレシーバー陣とは明らかに呼吸があっておらず、ワイドオープンになっているジュリアン・エデルマンにオーバースローのパスを投げる場面もあった。
 TEロブ・グロンカウスキーは前半にTDパスキャッチをしたものの、後半には出番が極端に少なくなり、昨季終盤に靭帯を断裂した膝の回復具合に不安を残した。


 元来ペイトリオッツはシーズン中に大きく成長するチームだ。決してビッグネームではないレシーバーでもブレイディの薫陶を受け、シーズンが深まってくると驚くような数字を残すことも珍しくない。
 ここ数年は弱点とされているディフェンスも、プレーオフに入る頃にはそれなりに整っていくものだ。だから、ペイトリオッツのスロースタートには驚かないのだが、この試合では昨年までのペイトリオッツとは決定的に違う点が一つだけあった。それは、相手がミスを連発したにもかかわらず、試合に勝てなかったということだ。


 ランオフェンスを除けばドルフィンズも決して好調だったわけではない。QBライアン・タネヒルはロングパスのコントロールが悪く、ビッグプレーのチャンスをいくつも失った。
 ドルフィンズ全体では3回のファンブル(ロスト2回)、1インターセプトなどミスが目立つ試合運びだった。こういう相手のミスは見逃さず、それに乗じて容赦なく倒すのがペイトリオッツだ。その姿が開幕戦では見られなかった。


 2001年途中にブレイディが先発QBとなってから、02年と08年を除いてAFCイーストを制しているペイトリオッツだが、その王座が揺らぎはじめる兆しなのか。わずか1試合で判断することはできないが、例年のペイトリオッツに比べると主力がそろっている割には仕上がりが遅い印象を受けた。


 ただし、ペイトリオッツは修正の早いチームだ。ほとんど連敗をしないし、ビル・ベリチックは敗戦の反省を活かしてさらにチームを強くすることのできるHCだ。前回開幕戦で敗れた03年も、終わってみればスーパーボウルで優勝した。
 今後、大きくチームが変わる可能性は十分にある。ベリチックもブレイディもこれまでにそういった苦境を幾度もくぐり抜けてきた。今後のペイトリオッツに注目だ。


 では、第2週の注目カードについても触れておこう。
 まず木曜日開催ゲームのスティーラーズ(1勝0敗)@レーベンズ(0勝1敗)。過去に何度も地区優勝を争ってきた2チームが早くも顔を合わせる。AFCの中で最も激しいライバル関係の一つだ。
 スティーラーズはQBベン・ロスリスバーガーとWRアントニオ・ブラウンのコンビによるパス攻撃が好調で、LBテレル・サッグス、DTハロティ・ナータ率いるディフェンスと対戦する。レーベンズはライスに代わるRBの台頭が不可欠だ。


 ファルコンズ(1勝0敗)@ベンガルズ(1勝0敗)はタイプの似たQBの初対戦が楽しみだ。ファルコンズのQBマット・ライアンは典型的なポケットパサーで、WRフリオ・ジョーンズ、ロディ・ホワイトをターゲットにパスを組み立てる。
 ベンガルズはQBアンディ・ダルトンとWR、AJグリーンのホットラインが中心だ。華麗なパスによる点の取り合いになると予想する。


 ベアーズ(0勝1敗)と49ers(1勝0敗)は、それぞれ同地区のパッカーズ、シーホークスから地区優勝奪回を目指すという意味でチームの状況がよく似ている。
 ベアーズのQBジェイ・カトラーは、開幕週はミスを連発してオフェンスのリズムを崩した。それをどう修正してくるか。
 49ersは、LBアルドン・スミスとナバーロ・ボウマン不在の影響は明らかで、ディフェンスの台所事情は苦しい。この試合は49ersの新スタジアム「リーバイス・スタジアム」で行われる初めてのNFL公式戦となる。

【写真】無期限の出場停止処分を受けたレーベンズのRBライスと夫人(AP=共同)