NFLの2014年シーズンはアメリカ東部時間4日(木)午後8時30分(日本時間5日(金)午前9時30分)に、昨年の王者シーホークスが地元センチュリーリンク・フィールドにパッカーズを迎える注目のカードで開幕する。
 当日に行われるのはこの1試合だけで、7日(日)に13試合、8日(月)に2試合が予定されている。


 32チームが今後17週間のレギュラーシーズンと3週間のプレーオフを経て、来年2月1日にアリゾナ州グレンデールで開催されるスーパーボウルへの出場権を懸けた戦いを繰り広げることになる。
 さて、観戦ガイド最終回の今回は、2002年の地区再編以降、ただ一つ毎年地区優勝するチームが替わっているNFCサウスと、激戦が予想されるAFCノースを紹介する。

 【NFCサウス】
 ▽カロライナ・パンサーズ(昨季12勝4敗)
 昨年は若きエースQBキャム・ニュートンの急成長とリーグ2位のディフェンスの力で5年ぶりの地区優勝とプレーオフ出場を達成した。
 ニュートンは運動能力が高く、自らボールを持って走ってビッグゲインのできる「モバイルタイプ」のQBだ。こうしたQBはパスが苦手な選手が多いのだが、ニュートンは肩が強くパスのコントロールも正確だ。ニュートンの脚力を生かしながら、パスと両立させるオフェンスの作戦が彼を大きく成長させた。


 1995年のチーム誕生後いまだ経験していない2年連続のプレーオフ出場を目指す今シーズンだが、ベテランのスティーブ・スミスを始め、ブランドン・ラフェル、テッド・ギンJrら、昨年ニュートンのパスターゲットとして活躍したWRがすべて退団してしまった。
 代わりに前スティーラーズのジェリコ・コッチェリー、ドラフト1巡指名の新人ケルビン・ベンジャミンらを獲得したが、コンビネーションの確立には時間がかかるかもしれない。


 ▽ニューオリンズ・セインツ(11勝5敗)
 好パサー、QBドルー・ブリーズが率いるパスオフェンスが武器のチーム。高得点を期待できる反面、ディフェンスが弱く、それがチームの足を引っ張ってきた。昨年から守備コーディネーターに就任したロブ・ライアンは、積極的にブリッツを使うアグレッシブなスキームを導入し、一定の成果を挙げた。今年はSジャイラス・バードの加入でターンオーバーを増やし、オフェンスを助けたい。
 注目はブリーズと、リーグ最高年俸のTEとなったジミー・グラハムのコンビだ。この二人にWRマーキス・コルストンが加わり、TDを量産する。


 ▽タンパベイ・バッカニアーズ(4勝12敗)
 元ベアーズのヘッドコーチ(HC)だったラビー・スミスが新HCに就任して、ディフェンス復活を図る。
 スミスはバッカニアーズが強力なディフェンスでリーグを席巻した1990年代終盤から2000年代初めにかけて、名将トニー・ダンジーの下でアシスタントコーチを務めた。古巣復帰でチーム再建に乗り出す。


 WRビンセント・ジャクソン、RBダグ・マーティン、DTジェラルド・マッコイ、Sダショーン・ゴールドソンといった名手がそろうが、地区優勝争いに加わるほどの戦力は残念ながらない。
 QBでは長くバックアップとして複数のチームでプレーしていたジョシュ・マッカウンが開幕先発を務めるが、スターターとしての実績に乏しいだけにあまり期待はできない。


 ▽アトランタ・ファルコンズ(4勝12敗)
 一昨年はNFC決勝にまで駒を進めた実力のあるチームだが、昨年は主力選手に故障者が続出して低迷した。戦力的には当時から大きく変わってはおらず、潜在能力は高い。
 QBマット・ライアンはミスの少ないパサーで、冷静な判断力の持ち主。彼のターゲットとなるのはWRフリオ・ジョーンズ、ロディ・ホワイトだ。ともにスピードがあり、ディープゾーンを攻めることができる。
 ジョーンズは昨年後半を足の骨折で棒に振ってしまい、それがチームの低迷の一因になったとの思いが強いので、今季は更に奮起するだろう。


 引退したTEトニー・ゴンザレス、オフの練習でアキレス腱を断裂して今季絶望となったLBショーン・ウェザースプーンの穴をいかに埋めるかが課題だ。


 【AFCノース】
 ▽シンシナティ・ベンガルズ(11勝5敗)
 かつてはNFL版「ダメ虎」と揶揄されたベンガルズだが、QBアンディ・ダルトン、WRのA・Jグリーンが入団した2011年からは毎年プレーオフに出場し、強豪の仲間入りを果たした。
 ただし、3年ともプレーオフ初戦で敗れており、1991年(1990年シーズン)を最後にポストシーズンの勝利からは見放されている。ファンはプレーオフ出場の「その先」を望んでおり、スーパーボウルを視野に入れた戦いが期待される。


 ベンガルズが力をつけてきたのはダルトン、グリーンの加入で得点力を増したオフェンスとパスラッシュを中心に強化してきたディフェンスがうまくかみ合ってきたためである。
 その功労者であるジェイ・グルーデン(前攻撃コーディネーター、現レッドスキンズHC)とマイク・ジマー(前守備コーディネーター、現バイキングズHC)はともに退団。その影響が懸念される。


 もう一つの課題は、ペイトリオッツやブロンコスといったプレーオフの常連チームにレギュラーシーズンで勝つことだ。こうした、いわゆる「エリートチーム」と呼ばれる強豪との試合では意外なほど弱い傾向がある。かつて格上と目していたチームを倒してこそ、プレーオフで勝てるチームができあがるのである。


 ▽ピッツバーグ・スティーラーズ(8勝8敗)
 かつては地区優勝争いの常連だったが、ディフェンスを中心に高齢の選手が増え、それが自慢のディフェンスの弱体化を招いた。過去2年はプレーオフから遠ざかっている。


 ドラフトで選手を獲得して育成していくのがチームの方針だが、今季は珍しくフリーエージェント(FA)による補強に積極的で、FSマイク・ミッチェル、WRランス・ムーア、RBルギャレット・ブラントらを獲得した。
 ドラフトではLBライアン・シェジア、WRマータビス・ブライアントを指名して、スピードアップを図った。
 プレシーズンゲームを見る限り、ディフェンスのスピードは戻りつつあり、今季は久しぶりに「スティールカーテン」の威力を発揮しそうだ。


 オフェンスはQBベン・ロスリスバーガーが得意とするノーハドル戦法で大量得点を狙う。ブラントと2年目のルベオン・ベルのRBコンビがプレシーズン中にマリファナ使用と保持で逮捕されるという恥ずべき失態を犯した。リーグから数試合の出場停止処分が科される可能性が高く、戦力への影響が心配される。


 ▽ボルティモア・レーベンズ(8勝8敗)
 スーパーボウルチャンピオンとして迎えた昨季は、引退や移籍で退団した選手の穴を埋めきれずに後退し、2008年以降続いていた連続プレーオフ出場が途絶えた。巻き返しを図る今季だが、選手の流出は止められず、戦力低下は否めない。
 ディフェンスはNTアーサー・ジョーンズを失ったことが痛く、看板のディフェンスに影響は必至だ。オフェンスは新コーディネーターに前テキサンズHCのゲーリー・クービアックを迎え、昨季よりランの比重を高めた新たなスキームを展開する。


 ▽ブラウンズ(4勝12敗)
 1999年のリーグ再加入後でプレーオフに出場したのは2002年の1度だけ。年間5勝未満という低迷が6年も続いている。ただし、昨年のディフェンスは総合8位と健闘し、新HCにディフェンス強化に定評のあるマイク・ペティンが就任したことで、さらなる発展が期待できる。


 最大の注目は新人QBジョニー・マンゼルがいつ登場するかだ。ダイナミックなプレーぶりが人気を呼ぶ選手だが、開幕はベテランのブライアン・ホイヤーが先発する予定だ。
 ただし、今季中のマンゼル登場は必ずあるはずで、ファンはそれを心待ちにしている。早ければバイウィーク(試合のない休息の週)が明ける第5週(10月5日)か、その翌週のホームでのスティーラーズ戦、チームの成績が伸び悩めば遅くともシーズン後半には登場するだろう。


 最後に開幕週の注目カードを紹介しておこう。
 ▽パッカーズ―シーホークス
 王者シーホークスの鉄壁ディフェンス対QBアーロン・ロジャース率いるパッカーズのパスオフェンスの対決が注目だ。今年のプレーオフでも顔を合わせる可能性の高いこの2チームの対戦は、両陣営の仕上がり具合を見るには絶好のカードである。


 ▽セインツ―ファルコンズ
 地区優勝を争うことになるであろう2チームが早くも第1週で対戦。点の取り合いになればパス好調のセインツ、ロースコアの展開になればファルコンズ有利か。


 ▽49ers―カウボーイズ
 1990年代にはNFCの覇権を争ったライバル同士の対戦。現在では49ers有利だが、人気チーム同士の対戦は盛り上がる。49ersは主力のLBアルドン・スミス(9試合の出場停止)、ナバーロ・ボウマン(膝の故障のためシーズン後半に復帰の見込み)を欠くのが痛い。


 ▽コルツ―ブロンコス
 AFCの強豪同士の対戦。こちらもプレーオフの前哨戦となる可能性が高い。ブロンコスのQBペイトン・マイングにとっては古巣との2度目の対戦となる。
 昨年のこのカードはコルツのホームで行われ、コルツに軍配。次世代のQBアンドルー・ラックとマニングとの世代闘争も試合に彩りを添える。

【写真】開幕戦に向けて記者会見に臨むカウボーイズのギャレットHC(AP=共同)