NFLでは、各チームともにプレシーズンゲームを4試合(殿堂入り式典記念試合「ホール・オブ・フェイムゲーム」に出場する2チームだけは5試合)を消化して開幕に備える。
 プレシーズンゲームはプロ野球で言うところのオープン戦にあたるが、主力選手は試合の半分も出場しない。ほとんどが控え選手や開幕ロースターに生き残れるかどうかの瀬戸際にいる選手がプレーすることになる。


 スタータークラスが最も長く試合に出場するのがプレシーズンの第2、3週だ。だから、これらの試合の内容を分析すればそのチームの今シーズンがかなり正確に予測できる。
 もっとも、シーズン中に使う戦術を隠しているチームもあれば、思わぬ伏兵が急成長して大きな戦力になるケースもある。だから、シーズンは予想通りには展開しないし、思いがけないドラマが生まれるのである。


 さて、開幕前の観戦ガイドも残すところあと2回。今回はAFC(アメリカンフットボール・カンファレンス)のサウス(南)地区とNFC(ナショナルフットボール・カンファレンス)のイースト(東)地区を取り上げて今季の展望を占いたい。


 【AFCサウス】
 ▽インディアナポリス・コルツ(昨季12勝4敗)
 若きエースQBアンドルー・ラックがオフェンスを引っ張るチームだ。かつてはペイトン・マニング(現ブロンコス)が先発QBに君臨し、リーグを代表するパスオフェンスを展開したチームだが、マニングが2012年に退団してからは、同年のドラフトで全体1位指名を受けて入団したラックを中心としたチームとなった。


 ラックはかつてヒューストン・オイラーズなどで活躍したオリバー・ラックを父に持つサラブレッドで、前評判通りにNFLでも好パサーに成長した。
 膝の靭帯断裂で昨季のほとんどを棒に振ったベテランWRレジー・ウェインが復帰し、さらにFA(フリーエージェント)で加入のハキーム・ニックスがプレシーズンでビッグプレーを連発しており、今年もパスは好調だ。2年連続で地区優勝を果たす可能性は高く、プレーオフでどこまで勝ち上がれるかに注目が集まる。


 懸念材料は補強がうまくいかなかったOLだ。ラックをパスラッシュから守り、ランプレーとパスのバランスをとれないようだと長いシーズンを戦うのは苦しい。
 ディフェンスは昨年のサック王DEロバート・マシスが薬物規定違反で開幕から4試合の出場停止処分を受ける。この間に強豪ブロンコス、イーグルス、地区ライバルのジャガーズ、タイタンズと対戦する。マシス欠場の影響が出ないように序盤を戦い抜くことが重要だ。


 ▽テネシー・タイタンズ(7勝9敗)
 新ヘッドコーチ(HC)にマイク・ウィゼンハントを招いて再建を目指す。ウィゼンハントはスティーラーズの攻撃コーディネーターとしてスーパーボウル優勝を経験し、08年にはカーディナルズのHCとしてチーム史上初のスーパーボウル出場を果たした。
 昨年はチャージャーズの攻撃コーディネーターを務め、プレーオフ出場に貢献した。その手腕が買われてのHC招聘だ。


 オフェンスはQBジェイク・ロッカー次第と言って過言ではない。11年のドラフト1巡指名だが、残念ながらここまではフランチャイズの顔となるべきQBに育ったとは言えない。契約の最終年にあたる今季はまさに正念場で、結果を出せないと来年はチームを追われることになるだろう。
 09年に2000ヤードラッシュを達成したRBクリス・ジョンソンを契約問題のこじれから解雇してしまい、スター不在の状態となった。タレント不足は否めず、今年も苦しい戦いが続きそうだ。


 ▽ジャクソンビル・ジャガーズ(4勝12敗)
 オフにディフェンスを中心に大幅な補強を行った。王者シーホークスからDEレッド・ブライアントとクリス・クレモンズを引き抜いた。ガス・ブラッドリーHCは一昨年までシーホークスの守備コーディネーターだったから、この二人の実力と起用法は熟知している。


 しかし、なんと言っても補強の目玉は新人QBブレイク・ボートルズだ。ドラフト全体3番目の指名で、チームが寄せる期待は大きい。プレシーズンでも62・2%という高いパス成功率を見せるなど順調にプロの水に慣れている印象だ。
 ただし、ジャガーズはあくまでもボートルズの実戦投入には慎重な姿勢を崩してはおらず、開幕週はベテランのチャド・ヘニーが先発QBを務める予定だ。ボートルズのレギュラーシーズンでのデビュー戦がいつになるかは楽しみだが、そのときはヘニーが故障または不振のためにポジションを失ったときだ。


 ▽ヒューストン・テキサンズ(2勝14敗)
 昨年はスーパーボウルの優勝候補の一つに挙げられながら、まさかの不調でチームを再建するはめになった。HCには元ペンシルベニア州立大学のビル・オブライエンが就任した。


 ディフェンスは依然として大きな武器で、DL、J・Jワットのパスラッシュは相手チームのQBには大きな脅威だ。そして、ドラフト全体1位指名のジェデイボン・クラウニーが加入してパスラッシュはいよいよ強力になった。
 クラウニーはプレシーズンで早くも能力を発揮し、素早い動きとパワフルなラッシュで敵のOLを翻弄する姿が何度も見られた。オフにスポーツヘルニアの手術を受けているためオーバーワークはさせられないが、トップ指名に値する活躍は期待できる。


 最大の疑問はオフェンスだ。昨年までのエースQBマット・ショーブはレイダーズにトレードで放出され、代わりにライアン・フィッツパトリックが新先発となる。
 フィッツパトリックは肩は強いが被インターセプトも多く、先発QBとしての成績も芳しくない。地区優勝候補のコルツに対抗するにはオフェンス力は不可欠で、フィッツパトリックの責任は重い。


 【NFCイースト】
 ▽フィラデルフィア・イーグルス(10勝6敗)
 昨年HCに就任したチップ・ケリーがオレゴン大学のHC時代に採用していたテンポの速いオフェンススタイルを導入したことが成功し、爆発的な得点力を持つオフェンスが誕生した。
 WRデショーン・ジャクソンが地区ライバルのレッドスキンズに移籍したのは痛手だが、RBルショーン・マッコイは健在で、パスのコントロールのいいQBニック・フォールズとともにオフェンスを牽引する


 2年連続で地区優勝を果たす可能性は高いが、例年お互いのライバル意識がむき出しになって激しい戦いをすることで知られるこのディビジョンなだけに、レギュラーシーズンで消耗して大事なプレーオフに力を発揮できない事態は避けたい。


 ▽ダラス・カウボーイズ(8勝8敗)
 過去3年間はいずれも8勝8敗で、しかも最終週の試合で地区ライバルに敗れてプレーオフ出場を逃してきた。そろそろその悪しき流れを止めたいが、ディフェンスの戦力低下が目立ち、苦戦が強いられそうだ。


 QBサックで球団記録を保持するDEデマーカス・ウェアを放出し、その後任としてDEデマーカス・ローレンスをドラフト2巡で指名したが、そのローレンスがキャンプ中に足を骨折して最大6試合を欠場する見込みだ。
 昨年は従来の3―4ディフェンスから4―3隊形への転換が失敗に終わり、球団史上最多の喪失ヤードを許してしまったディフェンスだが、今年も改善の材料は少ない。


 オフェンスは若い実力者がそろうOLが武器だ。特にLTタイロン・スミスはQBトニー・ロモのブラインドサイドを守る重要な存在だ。ロモはオフに受けた腰の手術から復帰し、得意のパスでプレーオフ出場を狙う。


 ▽ニューヨーク・ジャイアンツ(7勝9敗)
 07、11年シーズンにスーパーボウルに出場したジャイアンツだが、それ以外はプレーオフにも届かないなど、最近は好不調の波が大きい。それはエースQBイーライ・マニングの調子とシンクロする。
 シーズン終盤やプレーオフなど重要な局面では超人的なプレーを見せるマニングだが、兄ペイトンとは違ってコンスタントに好調を維持することができない。今季は攻撃コーディネーターがベン・マカフィーに代わり、これまで慣れてきたスタイルと一変する。
 マカフィーは素早くフィールドの動きを読んでパスを投げることを要求するが、マニングはどちらかというとレシーバーがオープンになるのをじっくりと待つタイプだ。新たなプレースタイルにいかに早く順応できるかが鍵だ。


 ▽ワシントン・レッドスキンズ(3勝13敗)
 2年ぶりのプレーオフ出場が果たせるか否かは、QBロバート・グリフィン3世の復活次第と言っていいだろう。2年前にリードオプションを駆使して一気にスターダムを駆け上がり、オフェンスの新人王を手にした「RG3」ことグリフィンだが、プレーオフで膝の靭帯を断裂する重傷を負った。昨年は開幕から復帰したが、マイク・シャナハン前HCとの折り合いも悪く、終盤にはベンチに下げられてしまった。


 今季からHCに就任したジェイ・グルーデンは、昨年までベンガルズの攻撃コーディネーターを務め、アンディ・ダルトンを育てたことで知られる。
 グルーデンはグリフィンを先発起用することを明言しており、さらにウェストコーストスタイルを導入することで、グリフィンのパス能力を開花させる方針だ。


 グリフィンの魅力はオプションプレーから展開するQBランだが、故障する可能性もある危険なプレーなだけに使用頻度を抑え、より安全で効率の高いパスでオフェンスを復活させる。
 イーグルスから加入のジャクソンを始め、アンドレ・ロバーツ、ピエール・ガーソンらレシーバー陣は豊富で大きな武器になる。

【写真】コルツオフェンスの大黒柱、QBラック(AP=共同)