NFLではプレシーズンが第2週を終え、主力選手が試合に出場する時間も徐々に増えてきた。ブラウンズやバイキングズなど、QBの先発争いが展開されるチームでは限られた出場時間の中でいかに首脳陣を納得させる結果を残すかが重要だ。
 プレシーズンゲームも残すところあと2試合。最終戦は主力を休ませるチームが多いので、実質は次の1週間でポジション争いに決着がつく。勝敗そのものはプレーオフレースに関係のないプレシーズンだが、戦っている選手たちは真剣そのものなのだ。


 今回は地区別展望の第2回。スーパーボウルチャンピオンのシーホークスが所属するナショナル・フットボール・カンファレンス(NFC)のウエスト(西地区)と、アメリカン・フットボール・カンファレンス(AFC)優勝のブロンコスが所属するウエスト(西地区)を紹介したい。
 この2地区は今季、カンファレンスをまたいでの対戦があり、シーホークスとブロンコスの再戦が早くも第3週で実現する。

 【NFCウエスト】
 ▽シアトル・シーホークス(昨季13勝3敗、スーパーボウル優勝)
 シーホークスは昨年、リーグ1位のディフェンスの力でスーパーボウル初優勝を果たした。「ディフェンスを制する者はフットボールを制する」という鉄則を証明した形だ。今年はDLに退団者が出たものの、選手層は厚いのでディフェンスの強さは変わらないだろう。
 シーホークスディフェンスの最大の武器はサイズの大きい選手がそろうDB陣だ。CBリチャード・シャーマンは191センチの体格を生かしたタイトなパスカバーとハードヒットが特長で、相手チームのエースWRと相対する。
 SSキャム・チャンセラーも191センチあり、ランプレーに対しても堅い守りを見せる。FSアール・トーマスは178センチと小柄だが、頭脳的なプレーでそれを克服してオールプロ入りした実力者だ。
 オフェンスはパワーRBのマーション・リンチが中心だが、3年目を迎えるQBラッセル・ウィルソンにも注目だ。ウィルソンはQBの当たり年と言われる2012年にプロ入りしたが、1巡1位指名のアンドルー・ラック(コルツ)、2位のロバート・グリフィン三世(レッドスキンズ)からは指名順位が大幅に遅れ、3巡目での指名だった。ところが、最も早く頂点を極めた。俊足を武器にした機動力に頼るのではなく、パスの精度にも磨きをかけたことが成功の理由だ。
 今季も戦力が充実しているシーホークスだが、弱点があるとすればレシーバーに人材が薄いことか。昨年チームトップの64キャッチを記録したゴールデン・テイトはライオンズに移籍した。トップWRの座はダグ・ボールドウィンと故障から復帰のパーシー・ハービンが争い、そこにTEザック・ミラーが加わる。控えに経験ある人材が少なく、故障者が出ればその影響は大きい。


 ▽サンフランシスコ・49ers(12勝4敗)
 シーホークスのスーパーボウル連覇を阻むライバルがいるとすれば、そのフロントランナーが49ersだ。昨年はNFC決勝でシーホークスに苦杯をなめたが、攻守ともにその戦力は充実しており、2年ぶりのスーパーボウル出場を狙う。
 49ersも強力なディフェンスに支えられるチームだ。特にQBサックを量産するアルドン・スミス、機動力抜群のパトリック・ウィリスを擁するLB陣は人材の宝庫だ。
 ただし、スミスは過去の法令違反に対する処罰として最初の6~8試合の出場停止処分が見込まれている。また、ナバーロ・ボウマンは昨季のNFC決勝で膝の靱帯を断裂する重傷を負い、完全復調は今季後半と考えられている。
 守備最大の武器であるLB陣に二人も有力選手を欠いてシーズンの半分を戦わなければならない。この時期をいかに乗り越えるかが今季の課題だ。
 オフェンスは若きエースQBコリン・キャパニックが機動力を生かしたオプションオフェンスを展開する。キャパニックとRBフランク・ゴアのランプレーはリーグでも最強クラスだ。レシーバーではキャパニックとの相性が抜群のマイケル・クラブツリー、キャッチ力に定評のあるアンクワン・ボールディンらWR陣に注目だ。


 ▽アリゾナ・カーディナルズ(10勝6敗)
 シーホークス、49ersに続くこの地区の第3勢力として期待されるのがカーディナルズだ。昨年は就任1年目のブルース・アリアンズHCの下で急速にチームが再建され、4年ぶりのプレーオフ出場まであと一歩にまで迫った。
 注目選手はWRラリー・フィッツジェラルドだ。ディフェンダーとのコンタクトを恐れない積極果敢な姿勢でダイナミックなパスキャッチを連発する。これまでは孤軍奮闘する時期が長く、ディフェンスからのマークが厳しかったが、マイケル・フロイドが第2WRとして成長したことでビッグプレーを生み出しやすくなった。
 ディフェンスはLBダリル・ワシントンが1年の出場停止処分を受けるのが痛手。ディフェンスを立て直すかが地区優勝争いに加わるための絶対条件だ。


 ▽セントルイス・ラムズ(7勝9敗)
 2000年代前半には華麗なパスプレーでNFLを席巻したラムズだが、昨今は勝ち越しすらままならない低迷期が続いている。それでも、2012年に闘将ジェフ・フィッシャーがHCに就任してからは徐々にチーム力をつけている。
 NFLで最も若いチームの一つだが、スター選手はそろっている。QBサム・ブラッドフォードは2008年にハイズマントロフィー、2010年にNFLのオフェンスのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞した好パサーだ。
 昨年は膝のじん帯断裂でシーズンの大半を棒に振ったが、急成長を見せたRBザック・ステイシー、新加入のWRケニー・ブリットとともにオフェンスを盛り上げる。ディフェンスではDEロバート・クィンが昨年チーム新記録となる19のQBサックをマークした。残念ながら地区優勝を争うにはまだチーム力が十分に整っていないが、台風の目とはなりうる存在だ。


 【AFCウエスト】
 ▽デンバー・ブロンコス(12勝4敗)
 昨年はNFL史上最多得点を記録したオフェンスでAFCを制したが、シーホークスに8―43と完敗した。今年もQBペイトン・マニングを中心としたパスオフェンスが威力を発揮することは間違いない。
 オフェンスはWRエリック・デッカー、RBノーション・モレノがフリーエージェントで退団したが、WRエマニュエル・サンダースの加入、RBモンティ・ボールの先発昇格で戦力の低下はみられない。はっきり言ってマニングがいる限り、このオフェンスはNFLトップクラスを維持できる。
 ディフェンスは大幅な補強を行った。カウボーイズで「サックマシーン」として活躍したDEデマーカス・ウェア、大型CBアキーブ・タリブ、ベテランSのT・Jワードが入団し、まるでオールスターチームの様相だ。とくにウェアとボン・ミラーのOLBコンビは相手QBへのパスラッシュの脅威となる。
 ディフェンスが期待通りに改善されれば、スーパーボウル優勝候補の筆頭と言っていい。


 ▽カンザスシティー・チーフス(11勝5敗)
 アンディ・リードHCの就任で一昨年の2勝14敗から大きくチームが改善され、プレーオフにも出場したが、今季その戦力を維持するのは難しい。
 サラリーキャップ(年俸総額の上限)に余裕がなかったためWRなど補強が必要なポジションに適材が見つからなかった。その一方で、LTブランデン・アルバート、WR/RBデクスター・マクラスター、CBブランドン・フラワーズらが退団した。
 アレックス・スミスは安定感のあるQBでミスのない試合運びをすることができる。RBジャマール・チャールズも確実にゲインできるバックで、ラン攻撃は心配ない。しかし、レシーバーは弱点のままで、ここがアキレス腱となりそうだ。ディフェンスはLBジャスティン・スミスのパスラッシュに注目。


 ▽サンディエゴ・チャージャーズ(9勝7敗)
 ベテランQBフィリップ・リバースが奮闘し、昨年は4年ぶりにプレーオフに出場した。チームの伝統であるオフェンスの復活が大きく、リバースのほかRBライアン・マシューズ、TEアントニオ・ゲイツ、WRキーナン・アレンが中心となって「ストップ・ザ・ブロンコス」に挑む。
 鍵はディフェンスで、パス守備を中心に補強を行ったが、その成果が出ればプレーオフへの連続出場も見えてくる。


 ▽オークランド・レイダーズ(4勝12敗)
 2002年シーズンにスーパーボウルに出場したものの、その後は一度もプレーオフはおろか勝ち越しのシーズンすらないという長いスランプに陥っている。今年こそ、との思いは強く例年にない大型補強を行った。
 注目は前テキサンズのQBマット・ショーブだ。ショーブは肩が強く、ロングパスでビッグプレーを生む力はある。昨年はインターセプトを連発してテキサンズの先発の座を失ったが、本来の力を発揮できればオフェンスを牽引できる。
 ディフェンスはDEジャスティン・タック、OLBラマー・ウッドリーらスーパーボウル優勝経験のあるベテランを加入させた。さらにドラフトではカレッジ界最高のLBと評価されたカリル・マックを1巡指名。彼らが相応の働きをすれば低迷脱出も夢ではない。
 ただし、獲得したベテランのほとんどがほかのチームから解雇された選手ばかり。ピークを過ぎた感のある選手も少なくなく、彼らがどこまで戦力として計算できるかは未知数だ。

【写真】プレシーズンで対戦したシーホークスのQBウィルソンとチャージャーズのQBリバース(AP=共同)