過去2回のNFL観戦ガイドで地区編成やレギュラーシーズンの仕組みなど「総論」を説明してきた。今回からは「各論」と位置づけて4回に分けて各カンファレンスから1地区ずつを選んで、その現状と今季の展望をみていきたい。


 今回はアメリカンフットボール・カンファレンス(AFC)からイースト(東地区)、ナショナルフットボール・カンファレンス(NFC)からはノース(北地区)を選択した。これは今季、両ディビジョン(地区)がインターカンファレンス(カンファレンスをまたいだ対戦)で顔を合わせるからだ。


 ちなみに1チームがレギュラーシーズン中に戦う16試合の内訳をおさらいしておくと、同じ地区に所属するほかの3チームとホーム&アウェー方式で計6試合、同じカンファレンス内の特定の地区の4チームと総当たりで4試合、同じカンファレンスで同地区と総当たりで対戦する地区以外の2つの地区で前年の順位が同じチームとの対戦(2試合)、そして、違うカンファレンスの特定の地区との4試合である。
 特定の地区の組み合わせはローテーションで決まっており、4年間かけて全チームとの対戦が実現する仕組みとなっている。


 今回取り上げるAFCイーストのチームを例に挙げると、地区内対戦のほか、AFCウェストの全チーム、AFCノース、サウスの昨年度同順位チーム、NFCノースの全チームと対戦する。
 それでは、AFCイーストとNFCノースの各チームの展望をみていこう。


 【AFCイースト】
 ▽ニューイングランド・ペイトリオッツ(昨季12勝4敗)
 過去13年間で地区優勝11回、スーパーボウル5回出場で3回優勝の強豪チーム。知将ビル・ベリチックがHCに就任した2000年以降力をつけ、2001年に先発QBとなったトム・ブレイディはリーグを代表するパサーに成長した。
 ブレイディはパスのコントロールがよく、勝負強さもピカ一。将来の殿堂入りが確実視されている。
 昨年のカンファレンス決勝で得点力の高いブロンコスに敗れた反省から、今年のオフはディフェンス強化に努めた。リーグ最強のカバーCBと言われるダレル・リービス、大型CBブランドン・ブラウナー、DEウィル・スミスといったビッグネームを獲得し、王座奪還に向けて準備を進めている。
 今年も戦力の充実度からみて地区優勝の可能性は高い。ライバルのブロンコス、成長著しいコルツとのプレーオフでの対戦が早くも視野に入る。


 ▽ニューヨーク・ジェッツ(8勝8敗)
 打倒ペイトリオッツ&ベリチックに異様な執念を燃やすレックス・ライアンHCの意地がどこまでチームを引っ張るか。鍵を握るのは2年目QBジーノ・スミスの出来だ。
 昨年も開幕から先発を務めたがパスが不調でチームの勝ち星も伸びなかった。シーズン終盤で被インターセプトが減るなど成長のあとを見せたために今季も1番手としてシーズンに臨むが、不調ならFAで獲得のベテランQBマイケル・ビックがポジションを奪うことになる。スミスは足が速く、機動力が武器。その長所を生かしたプレーができるか。
 新加入のRBクリス・ジョンソンは2009年に2000ヤードラッシュを達成した名バックだ。昨年は故障で本調子ではなかったが、復調すればラン守備に弱点のあるペイトリオッツを苦しめることが可能。


 ▽マイアミ・ドルフィンズ(8勝8敗)
 昨年は残り2試合で1試合でも勝てば5年ぶりのプレーオフという状況で2連敗。プレーオフ争いの力がついたという見方もできるが、「嫌がらせ騒動」が起きたOLは一人をのぞいて全員が退団。一からユニットを作らなければならない。
 QBライアン・タネヒルは3年目。緩やかな成長曲線を描いているが、WRやRBにプレーメーカーが不足しているのが悩みだ。ディフェンスはDEキャメロン・ウェイクに注目だ。コンスタントなパスラッシュでQBにプレッシャーをかけ、サックを量産する。


 ▽バファロー・ビルズ(6勝10敗)
 1998年を最後にプレーオフ出場がなく、現在最も長くポストシーズンから遠ざかっているチームだ。昨年就任したダグ・マローンHCの下でチーム再建が進む。
 昨年はディフェンスが好調だったが、今年はエースSジャイラス・バードがFAで移籍し、ディフェンスを構築したコーディネーターのマイク・ペティンもブラウンズのHCに就任するため退団した。さらにLBの中心選手に育ったキコ・アロンソが膝の靱帯断裂で早くも今季絶望となり、難しい状況に立たされている。
 オフェンスは2年目のQBのEJマニュエルとドラフト1巡指名のWRサミー・ワトキンスが新たなホットラインを形成する。


 【NFCノース】
 ▽グリーンベイ・パッカーズ(8勝8敗1分)
 QBアーロン・ロジャースを中心としたパスオフェンスが得意なチーム。昨年はロジャースが鎖骨を骨折して戦列を離れ、その間にベアーズに追いつかれて最終戦まで地区優勝を争った。今季はロジャースが完全復帰し、例年通り強力なパスオフェンスを展開するだろう。
 得点力の高いオフェンスに対してディフェンスが弱いのがパッカーズの特徴でもあった。しかし、今季はパスラッシュの名手ジュリアス・ペッパーズ、ルーキーでトップDBと評価されるハハ・クリントン・ディックスが加入。攻守にバランスのとれたチームで2010年以来のスーパーボウル出場を目指す。


 ▽シカゴ・ベアーズ(8勝8敗)
 パッカーズとのライバル関係はNFL最古と言われる。伝統的にディフェンスが強いが、最近はQBジェイ・カトラー、WRブランドン・マーシャル、RBマット・フォーティを中心としたオフェンスがチームを引っ張る。
 昨年就任のマーク・トレストマンHCはオフェンススキーム構築を得意とし、CFL(カナダのプロフットボールリーグ)でも優勝経験がある。彼の指導の下でカトラーのパス成功率が上がり、それが昨季の好調につながった。
 今季はサック王のDEジャレッド・アレンがFAで加入し、ディフェンス復活を目指す。


 ▽デトロイト・ライオンズ(7勝9敗)
 HCが前レーベンズ攻撃コーディネーターのジム・コールドウェルに替わった。コールドウェルはレーベンズのジョー・フラッコ、コルツ時代のペイトン・マニング(現ブロンコス)といったQBを育成してきた手腕が高く評価されている。
 彼の指導の下で肩は強いが被インターセプトも多いマシュー・スタッフォードがさらに成長することが期待される。
 注目選手は「メガトロン」との異名を取るビッグWRカルビン・ジョンソン、DTダムコング・スー、ニック・フェアリーら。


 ▽ミネソタ・バイキングズ(5勝10敗1分)
 前ベンガルズ守備コーディネーターのマイク・ジマーが新HCに就任。注目は正QB争いだ。2011年ドラフト1巡指名のクリスチャン・ポンダーは成長のあとがみられず、昨年はマット・キャセルにポジションを奪われた。さらに今年はドラフト1巡でテディ・ブリッジウォーターが入団。これまでとは違ったチーム作りに着手する。
 エイドリアン・ピーターソンは押しも押されもせぬエースRB。彼のプレーを楽しむだけでもバイキングズの試合を見る価値はある。

【写真】常勝軍団ペイトリオッツの攻撃をけん引するQBブレイディ(AP=共同)