NFLの開幕まであと1カ月を切った。プレシーズンゲームの開幕を告げる殿堂入り式典記念試合「ホール・オブ・フェイムゲーム」も開催され、開幕ムードは日を追うごとに高まっている。


 さて、今回はNFL観戦ガイドの2回目。前回はお気に入りのチームを見つけようというテーマで、その方法を紹介した。今シーズンを通して追いかけるチームが決まったら、そのチームがどのディビジョン(地区)に所属するかを確認しよう。
 NFLは全部で32チームあり、16チームずつ二つのカンファレンスに別れて構成している。カンファレンスはアメリカン・フットボール・カンファレンス(AFC)とナショナル・フットボール・カンファレンス(NFC)と呼ばれる。


 プロ野球でいうセントラル・リーグ、パシフィック・リーグ、MLBのアメリカン・リーグ、ナショナル・リーグのようなものだが、野球ではDH制などのようにリーグごとに独自のルールがあり、交流戦を除いてリーグをまたいだ試合が行われることは珍しい。
 NFLの場合はカンファレンスが違ってもルールは同じで、所属カンファレンスの異なるチーム同士の試合も毎週行われる。


 各カンファレンスは東西南北の四つの地区にわかれており、それぞれの地区に4チームが所属する。この地区内のライバルチームとの対戦がNFLの醍醐味の一つだ。
 NFLでは基本的に地理的に近いチーム同士が同じディビジョンに所属するように割り振られている。


 例えばAFC北地区ではスティーラーズ(ペンシルベニア州ピッツバーグ)、ブラウンズ(オハイオ州クリーブランド)、ベンガルズ(オハイオ州シンシナティ)、レーベンズ(メリーランド州ボルティモア)といったように東海岸北部のチームが集まっている。なかでもピッツバーグとシンシナティはオハイオ川でつながっており、「リバーフロントライバル」と呼ばれて対抗意識が強い。


 地理的に近いとチーム同士やファンの間にライバル意識が芽生えやすい。さらにNFLでは地区優勝したチームがプレーオフに出場でき、少なくとも1回はホームで試合を開催する権利を与えられるので、地区内対戦の意味がとても大きいのだ。
 同地区ライバルとはホーム&アウェー方式で2度対戦する。つまり、各チームとも地区内対戦(「ディビジョンゲーム」と呼ぶ)が6試合あることになる。
 1チームが年間で戦うレギュラーシーズンゲームはわずか16試合だから、ディビジョンゲームが占める割合は高く、そこでいくつ勝てるか、総合成績に与える影響は決して小さくない。


 ディビジョン内のライバル関係は関西学生リーグに例えればわかりやすいかもしれない。今季のディビジョン1編成で言えば関西学院大学、立命館大学、関西大学、京都大学が同じ地区に所属し、互いにホーム&アウェーで戦って優勝を争うのだ。
 ライバル意識がむき出しになった激しい試合が想像できるだろう。それがNFLのディビジョンゲームで行われているのだ。


 では、NFLでも有名な同地区ライバルをいくつか紹介しよう。先ほどのAFC北地区はすべてが「犬猿の仲」だ。スティーラーズとブラウンズはAFC最古のライバル関係で、その因縁の歴史は長い。
 また、以前にこのコラムでも紹介したが、レーベンズはかつてクリーブランドに所属したブラウンズがボルティモアに移転して新チームとなったもので、現在のブラウンズとは「家元争い」的な物騒さがある。ベンガルズのオーナーであるマイク・ブラウンは父であり名将と呼ばれたポール・ブラウンがかつてブラウンズのHCを解任された恨みからブラウンズとレーベンズが大嫌い、といった具合だ。


 東地区はペイトリオッツの王朝時代が続いているが、それにかみつくのがジェッツだ。レックス・ライアンHCは相手を挑発することが好きで、ことにペイトリオッツのビル・ベリチックHCに対しては常に挑戦的だ。
 西地区のブロンコスとチーフスは1990年代に何度も地区優勝争いをした仲だ。ともにホームスタジアムのファンのクラウドノイズが大きいことで知られ、地元開催で敗れることを大きな恥とする風潮がある。


 NFCでは北地区のベアーズとパッカーズがNFLで最も歴史あるライバル関係だと言われる。ともにシーズン終盤の12月には極寒の地となるので、これまでには雪の中や氷点下の気温での名勝負がたくさんあった。
 東地区のライバル関係はアメリカの歴史そのものだ。カウボーイズとレッドスキンズの関係はアメリカの開拓史を彷彿とさせるし、イーグルスの所属するフィラデルフィアは独立宣言起草の地だ。
 そして、文化の中心地ニューヨークを代表するジャイアンツが加わって激しいライバル関係を形成している。


 現在の地区編成は2002年に制定されたものだが、これまで2年連続の地区優勝が一度も達成されていないディビジョンが一つだけある。それが南地区だ。
 常に新しいチームが台頭し、目まぐるしく変わるこのディビジョンは2002年に新設された歴史の浅い地区であるにもかかわらず、所属4チームのライバル意識は強い。


 西地区の49ersとシーホークスも新しいライバル関係だ。シーホークスは2002年の地区編成に伴ってAFCから編入した。
 当時は他の3チームが低迷期にあったので1強時代が続いたが、そこに49ersが80年代の黄金期を思わせる復活を遂げて、最近は毎年のように激しい地区優勝争いを演じている。
 一昨年は49ersが、昨年はシーホークスが地区優勝してそのままスーパーボウルに出場した。昨年はカーディナルズも好調で、三つ巴の戦いが期待できる。


 地区の話が出たので、ここでレギュラーシーズンの試合の仕組みを紹介しておこう。各チームは17週間の間に16試合を戦う。チームはすべてシーズン中に1週だけオフが与えられる。このオフがシーズン序盤に来るのか、または選手の疲れがピークになる11月ごろに訪れるのかは大きな違いだ。


 ここでお気付きかと思うが、32チームあるNFLで各チームとも年間16試合しか行わない、しかもそのうち6試合が同地区対決であるということは、シーズン中に対戦しない相手が複数あるということだ。
 1シーズンに対戦する相手は13チームだけなので、むしろ顔を合わせないチームの方が多い。これがNFLの特徴だ。


 NFLではそれぞれのチームは同地区内ライバルと6試合、同じカンファレンスで違うディビジョンのチームと6試合、違うカンファレンスの一つのディビジョンの全チームと4試合を行う。
 そして、シーズン終了時にディビジョン内で最も勝率の高いチームが地区優勝となり、プレーオフで勝利数の多い順に1~4位シードを獲得する。
 四つの地区優勝チームを除き、次にカンファレンス全体で勝率の高い2チームがワイルドカードとなり、勝利数に応じて第5、6シードが割り振られる。プレーオフの仕組みについては、12月ごろに詳しく触れたいと思う。


 今回はチームのライバル関係が色濃く反映される地区編成について説明した。レギュラーシーズン16試合の内訳など基本的な仕組みもこれで理解していただけたと思う。次回からは、現在のチーム状況や展望などを具体的に追ってみることにする。

【写真】ペイトリオッツとの合同練習後に米海軍と記念写真を撮影するレッドスキンズのQBグリフィン(AP=共同)