NFLのチームの名前にはユニークな由来が多い。
 例えばバファロー・ビルズ。これはアメリカ西部開拓時代の有名なガンマンであるウィリアム・フレデリック・コディ、通称「バファロー・ビル」とチームの本拠地ニューヨーク州バファロー市を掛けたものだ。


 ビルズの同地区ライバルのペイトリオッツは「愛国者」という意味だ。ホームのニューイングランド地方はイギリスからの移民が最初に根付いた場所であり、独立戦争の発祥の地でもあることからこの名前が付けられた。
 アメリカ合衆国の歴史に由来するのはサンフランシスコ・49ersも同じで、1849年のゴールドラッシュでカリフォルニア州に集結した開拓者たちをシンボルとしたものだ。


 テキサス州に所属する2チームはともに南部の誇りをイメージした。ダラス・カウボーイズは正義の象徴、ヒューストン・テキサンズは誇り高きテキサス人という意味である。
 ピッツバーグ・スティーラーズ(鉄鋼業)とグリーンベイ・パッカーズ(缶詰工業)は地元産業を表したもの。クリーブランド・ブラウンズは初代ヘッドコーチ、ポール・ブラウンの名字から、ボルティモア・レイブンズが当地で没した詩人エドガー・アラン・ポーの『大鴉』という詩に由来することは以前にこのコラムでも紹介した。


 今、ワシントン・レッドスキンズの名称が話題となっている。ヘルメットに描かれているインディアンの酋長のデザインや赤い肌を意味するレッドスキンがネイティブアメリカンを侮蔑するとして、名称変更を求める声が大きくなっているのだ。
 レッドスキンズの名称を差別的表現だとする議論は以前からあった。しかし、最近になって上院議員が名称変更を求める書簡をNFLコミッショナーに提出したり、合衆国特許商標庁が「レッドスキンズ」を商標登録から除外したりするなど動きが活発化している。もっとも、これらには法的拘束力はなく、現状ではレッドスキンズに名称変更の義務はない。


 ダニエル・スナイダー・オーナーは、名称変更を拒否する姿勢を取り続けている。ブルース・アレン球団社長が上院議員に宛てた返書では「レッドスキンズはネイティブアメリカンの団結を象徴する言葉である」と述べられており、ロゴはもともとネイティブアメリカンによってデザインされたものであり、ネイティブアメリカンから支持されているという世論調査の結果もあると主張している。
 ネイティブアメリカンを支援する人権派グループによる訴訟も起こされているが、結審するまでにはまだ数年かかる見込みだとされている。しかし、名称変更を求める声がさらに強まり、動きが加速化する可能性はある。


 アメリカは人種差別に敏感な国だ。4月にはNBAロサンゼルス・クリッパーズのドナルド・スターリング・オーナーがアフリカ系アメリカ人を差別する発言をしたとしてリーグを追放されたのは記憶に新しい。
 こうした世論がNFLとレッドスキンズに向けられれば、現在は静観しているロジャー・グッデル・コミッショナーも動かざるを得ないだろう。


 レッドスキンズの名称は80年以上にわたって使用されており、カウボーイズとの伝統のライバル関係を生んだ理由の一つでもある。
 名称変更を望まない声はファンを中心にNFLでは根強くある。差別を根絶するというリーグの立場との板挟みだ。


 およそ2カ月半で2014年のシーズンが開幕する。レッドスキンズの名称に関する議論はさらに活発化するだろう。チームとNFLがどのような対策を講じるのか、注目だ。

【写真】名称変更を訴えるネイティブアメリカンのモラレスさん=2013年(AP=共同)