NFLチームが採用する戦略はHCや攻撃、守備コーディネーターの方針によって決まる。したがって、HCやコーディネーターが交代すれば、スキームががらりと変わることも珍しくない。


 一方で、伝統的なカラーをかたくなに守り、たとえトップが代わろうとそのスタイルを貫き通すチームもある。ほぼ半世紀にわたってディフェンスを看板としている「スティーラーズ」(AFC北地区)がそうだ。


 「スティーラーズといえばディフェンス」というイメージが定着しているほど、このチームは伝統的に守備力に定評がある。
 1970年代だけで4回ものスーパーボウル優勝を達成して、そのディケイド(10年間)を代表するNFLチームと呼ばれるようになったのもディフェンスの力によってであった。


 当時のスティーラーズのディフェンスにはDTジョー・グリーン、LBLBジャック・ハム、ジャック・ランバート、CBメル・ブラントら、後に殿堂入りを果たすスター選手がそろい、圧倒的な強さを誇った。
 DLをストロングサイドにシフトさせる「オーバー」や、逆にウィークサイドに寄せる「アンダー」のアライメント(選手配置)を駆使し、常に「攻め」の姿勢を持つ積極的なスキームは当時革新的なものだった。


 その鉄壁さは本拠地のあるペンシルベニア州ピッツバーグが鉄鋼産業で有名だったことになぞらえて「スティールカーテン(鉄のカーテン)」と異名をとるほどだった。
 ファンが「テリブルタオル」と呼ばれる黄色いタオルを振ってスタンドを黄色に染める応援の形もこの頃にできた。パッカーズのチーズヘッドと並び、NFLでは広く知られたファン必須の応援アイテムである。


 オフェンスにもQBテリー・ブラッドショー、RBフランコ・ハリス、WRリン・スワン、ジョン・ストールワースを従え、70年代の第9、10回、第13、14回のスーパーボウルで2度の連覇を成し遂げた。
 この間に指揮を執ったチャック・ノールは、NFLでただ一人4度のスーパーボウル優勝を果たしたHCである。
 ちなみに、後にコルツを優勝に導くことになるトニー・ダンジーや昨季のスーパーボウルを制したシーホークスのピート・キャロルなどはノールのアシスタントとしてスティーラーズでディフェンスを学んだ。


 スター選手が徐々に去っていった80年代にやや低迷期を迎えたが、90年代に入ってビル・カウアーがHCに就任すると、その強さが復活する。
 カウアーは当時、まだNFLで採用するチームが少なかった3―4ディフェンスの導入をはかり、あらゆるディフェンスポジションからブリッツを仕掛けてQBにプレッシャーをかけるアグレッシブなスタイルを確立した。
 CBロッド・ウッドソン、Sカーネル・レイク、LBグレッグ・ロイド、ルフォン・カークランド、ケビン・グリーンらを輩出したのが当時のディフェンスだ。いつしかそのスキームは「ブリッツバーグ」と呼ばれ、スティーラーズ・ディフェンスの新たな代名詞にもなっていったのである。


 このスタイルの基礎を作ったのが、現在も守備コーディネーターを務めるディック・ルボウだ。現役時代はライオンズのDBとして活躍し、インターセプトの多さで知られた。
 ルボウはブリッツをするとパスカバーがマンツーマンに限られてしまうという弱点を克服するために、DLをパスカバーに割くことでゾーン守備を可能にする方法を考案した。これが「ゾーンブリッツ」だ。
 このスキームはどの選手がブリッツし、どの選手がパスカバーに下がるのかが予測しにくいという利点がある。QBは判断を狂わせ、パス失敗、もしくはインターセプトの確率が高くなるのだ。


 HCが交代してもスキームがぶれないということが証明されたのは、カウアーがチーム5度目となるスーパーボウル優勝を達成したあとに勇退した2007年のことだ。
 後任のマイク・トムリン現HCはダンジーの下で4―3守備を学び、いわゆる「タンパ2」とよばれるカバー2主体のディフェンスを得意としていた。
 タンパ2はほとんどブリッツを使わないため、ブリッツバーグとは対極をなす。普通ならチームが新HCのスキームに合わせるところだが、スティーラーズでは留任したルボウの方針を優先し、トムリンが譲歩するという形で現在も3―4隊形をベースとしている。伝統を重視するスティーラーズならではのエピソードだ。


 NFLで唯一ヘルメットのロゴが片側(右側)にしか入っていないこともスティーラーズのユニークな一面だ。ヘルメットのロゴを描くことがNFLで流行し始めた1960年代に、スティーラーズも実験的にロゴ入りのヘルメットを着用した。
 ロゴは米鉄鋼研究所のマークを使用し、とりあえず右側にだけ入れて選手やファンの反応を見ることにした。当時のヘルメットは黄色で、現在と同じ三つのダイヤモンドと「Steel」の文字が入っていた。


 このヘルメットを採用した1962年に、スティーラーズは過去最多の9勝を挙げた。験を担いだスティーラーズは、そのまま片側だけにロゴの入ったヘルメットを着用することを正式に決めたのである。
 ヘルメットの色が黒に変わり、「Steel」の文字がチーム名の「Steelers」となってもそのスタイルが変更されることはなく現在に至っている。


 この2年間はプレーオフから遠ざかり、地区ライバルのレイブンズとベンガルズに地区優勝をさらわれているスティーラーズ。今季にかける王座奪回はディフェンスの力で成し遂げるのがやはりスティーラーズらしい。

【写真】練習で指示を出すスティーラーズのトムリンHC=(AP=共同)