3日間にわたって行われたNFLドラフトが終了した。テキサンズが持っていた注目の全体1位は、予想通りジャデベオン・クラウニー(ノースカロライナ大DE)が指名された。
 また、同性愛者であることを公表して話題を呼んだマイケル・サム(ミズーリ大DE)はラムズから7巡で指名を受けた。QBは意外と不人気で、人材が抱負とされたOLやWRは引く手あまただったのが特徴だ。


 カレッジ界のビッグネームがそろう1巡指名でのサプライズは、早くも3番目指名権を持つジャガーズによって巻き起こされた。
 2位のラムズが順当にOTグレッグ・ロビンソン(オーバーン大)を指名したその数分後、プレゼンターを務めたロジャー・グッデルNFLコミッショナーの口から発せられたのは「QBブレイク・ボートルズ(セントラルフロリダ大)」の名前だった。


 会場となったニューヨーク市のラジオシティー・ミュージックホールはどよめきに包まれた。それもそのはず、大方の予想ではジャガーズの1巡指名は運動能力の高さで評価されたLBカリル・マック(バファロー大)であったからだ。
 さらにボートルズは同じく1巡で指名されたジョニー・マンゼル(テキサス農工大)やテディ・ブリッジウオーター(ルイビル大)らに比べて注目度は低かった。それが今年のドラフトで最初に指名を受けたQBとなったのだから、驚きの声があがるのも無理はなかった。


 ジャガーズがQBを必要としていたのは事実で、ドラフトによる人材確保は何の不思議もない。ただし、マックやサミー・ワトキンス(クレムゾン大WR)のようなビッグプレーメーカーを見送ってまで獲るべき選手であったかどうかは疑問だ。


 ましてや現在のジャガーズはWRジャスティン・ブラックモンが無期限の出場停止処分中で、RBも長年先発を務めてきたモーリス・ジョーンズ・ドリューがレイダーズに移籍してオフェンスのエースが不在の状態だ。新人QBをオフェンスの中心に置くのは得策ではない。
 むしろ、プレーメーカーを獲得して、今年はベテランのチャド・ヘニーにQBを任せ、来年以降で人材を求める方がよかったのではないか。


 トレードをうまく行使したのがブラウンズだ。4番指名権を持っていたブラウンズは9位のビルズと1巡指名権を交換し、その見返りとして来年の1、4巡指名権を譲り受けた。その後、8位のバイキングズと交渉して順番を入れ替え、オクラホマ州立大のDBダーケズ・デナードを指名。また、もう一つ持っていた1巡指名権(26番目)をイーグルスとの交渉で四つ繰り上げてマンゼルの獲得に成功した。


 ブラウンズが1巡でQBを指名するのはほぼ間違いないと予想されていた。しかし、1巡下位まで辛抱強く待ち、DBとQBを補強するだけでなく、ビルズの来年の1巡指名権まで獲得したのだから作戦勝ちと見るべきだ。
 マンゼルの評価が以前より低くなっていたことで成功した戦略だが、情報をうまく収集し、的確な状況判断を下したことが功を奏した。


 ところが、皮肉にもドラフト後にこの状況が一変する。エースWRジョシュ・ゴードンが薬物テストで陽性反応を示し、出場停止の可能性が濃厚になってきたのだ。ゴードンの薬物規定違反は公表されているものだけで5回目を数える。昨年も2試合の出場停止を受けたばかりだ。
 NFLは違反が度重なるほど処分を重くするので、ゴードンは1年の出場停止となる見込みだ。ブラウンズの描いた青写真では、昨季リーグトップのレシーブ距離を稼ぎ、オールプロにも選出されたゴードンとマンゼルのコンビを中心にして低迷脱出の原動力となるオフェンスを作り上げようとしていたはずだ。それが大きな修正を余儀なくされることになる。


 ビルズがワトキンス獲得に躍起になったのは2年目を迎えるQBのE・Jマニュエルの成長を促す人材になると判断したからだ。
 しかし、来年の1巡指名権を手放してまで獲るべきだったか。ほかにマイク・エバンス(テキサス農工大)やオデル・ベッカムJr(ルイジアナ州立大)のようなWRもいた。確かにワトキンスの方がスピードも実績もあるが、事実上二つの1巡指名権を行使して獲るリスクを負う必要はなかったと考える。


 両者にメリットのあるトレードとなったのは1巡最終指名権を持っていたスーパーボウルチャンピオンのシーホークスとバイキングズだ。
 1巡9番目指名でLBアンソニー・バー(UCLA)を獲得したバイキングズはシーホークスに交渉を持ちかけて1巡指名権を譲ってもらい、ブリッジウオーターの指名に成功した。


 代わりにシーホークスが得たのは2、4巡指名権だ。ブラウンズとビルズのトレードを見るとシーホークスに不公平な印象があるが、実はそうではない。
 シーホークスは中、下位指名の選手を主力の育て上げてきた実績がある。スーパーボウルMVPのLBマルコム・スミスは2011年の7巡、オールプロCBリチャード・シャーマンは同年5巡、Sキャム・チャンセラーは2010年5巡である。


 QBラッセル・ウィルソンもアンドルー・ラック(コルツ)、ロバート・グリフィンIII世(レッドスキンズ)、ライアン・タネヒル(ドルフィンズ)、ブランドン・ウィーデン(前ブラウンズ、現カウボーイズ)らが1巡指名を受けて話題となった2年前のドラフトの3巡だ。
 指名権が増えればそれだけ先発候補を発掘できるというシーホークスの自負が、このトレードに表れている。


 補強のニーズを着実に埋めるドラフトに徹したのはパッカーズとセインツだ。ともに補強の必要なポジションを早いラウンドで指名し、その後に控えとなる人材を集めて層を厚くした。もともとパッカーズはドラフトでチーム作りをする方針のチームで、今年もブレはなかった。セインツはWRとDBという二つの大きな課題をクリアできたのが大きい。


 逆にバッカニアーズはCBとQBを補強することができなかった。特にQBの問題は深刻だ。現在在籍しているのは、昨年の先発マイク・マクグレノン、バックアップとしての貢献が長いベテランのジョシュ・マッカウン、プロでわずか16回しかパスを投げていないマイク・カフカ、ドラフト外新人のブレット・スミスのみ。
 1巡7番目の指名権でマンゼルかブリッジウオーターを獲得できるポジションにいただけに残念だ。


 サムにとってラムズはプレーしやすい環境であるはずだ。ジェフ・フィッシャーHCは選手に人望の厚い人物で、強力なリーダーシップでチームをまとめる力を持っている。同性愛者であることをカミングアウトして、ともすれば嫌がらせや差別を受ける恐れも否定できないが、フィッシャーの影響力の大きいチームならそういった問題は起こりにくいと思われる。


 ペイトリオッツが2巡でジミー・ギャロポロ(イースタンイリノイ大QB)を指名したのは興味深い。ペイトリオッツもいよいよ不動のエースQBトム・ブレイディの後継者育成に乗り出したということだろうか。
 それにしても、イースタンイリノイというフットボールではメジャーではない大学のQBにペイトリオッツはどのような能力を見出したのか。


 もっとも、無名校から有名選手が輩出された例は少なくない。かつてミシシッピーバレー州立大という全く無名の大学から1巡指名を受けて希代の名選手となった人材もいる。1985年に49ersから指名され、現役時代はチームの黄金時代を支えながらレシーブ部門のほとんどすべてのNFL記録を塗り替えて殿堂入りしたジェリー・ライスである。
 今年も多くのダイアモンドの原石がプロ入りした。次世代のNFLを支える選手が何人誕生するだろうか。明日のジェリー・ライスは現れるのか。彼らのNFLデビューが待たれる。

【写真】ラムズが7巡で指名したDLサムとフィッシャーHC(AP=共同)