残念なことだが、オフ中のNFLのニュースは選手の移籍やドラフトの話題を除けば不祥事にまつわることが多い。その多くは飲酒運転や家庭内暴力による逮捕だが、49ersのLBアルドン・スミスの場合は空港で爆弾所持をほのめかすという悪質なものだった。


 事件が起こったのは今月13日、ロサンゼルス国際空港でのことだ。搭乗前のセキュリティーチェックで空港警備職員と口論になり、その過程で爆弾を所持しているような発言をして逮捕された。もちろんそれは嘘であり、爆弾は見つからずに保釈金2万ドルを払ってその日のうちに自由の身となった。


 口論で激高したうえでの不用意な発言だったとはいえ、有罪が認められれば最大1年の禁固刑に値する罪だという。
 3人が死亡し、260人以上が負傷した昨年のボストンマラソンでの爆破テロ事件から1年を迎えようとする中でのこの発言は、あまりにもデリカシーに欠け、オールプロにも選出されたNFL選手にあるまじきものだ。それ以前に社会人としての品格に欠ける。


 そして、彼の所属する49ersの対応も甘い。これまで球団はGMトレント・ボールキーが「アルドン・スミスにまつわる事件を聞き、チームとして遺憾に思う。捜査が進行中ということもあり、われわれも事実関係を調査しているところだ」と述べたのみだ。
 事件当初は厳罰に処す可能性があると伝えられたが、1週間後には態度を軟化させる情報も報道された。


 スミスは2011年の入団時に49ersと条件付きの5年契約を結んでおり、5年目(来年)の契約を有効にするか否かの選択権は球団側にある。
 その期限は今年の5月3日で、49ersはオプションを行使する、つまり契約を有効にする方針だという。そうすればスミスは、2015年まで49ersの契約下にあることになる。


 この処遇に対する疑問の声があがっているのは言うまでもない。昨年も飲酒運転で逮捕された後に課されたリハビリを受けるために5試合に欠場したばかりだ。3年間で42ものQBサックを決めている名手であるとはいえ、49ersの対応が緩すぎると批判されても仕方がない。


 もっとも、49ersが独断で出場停止などの処分をスミスに下すわけにはいかないという事情もある。現在のリーグと選手間の労使協定(CBA)では、チームによる選手の処罰を原則的に禁止しているからだ。
 処罰を決めるのはリーグであって、チームの判断ではできないことが2011年の協約改定で明記された。


 スミスは最近3年間だけでも飲酒運転や銃刀法違反の罪に複数回問われている。後者は三つの罪状に及び、29日から公判が始まるがスミスは無罪を主張する意向だ。
 NFLは選手の不祥事について、裁判所判断を待ってから処分を下す方針を貫いている。おそらく今回も、公判後にスミスへの出場停止処分が決まるだろう。
 たとえ無罪判決となったとしても、これだけ世間を騒がせたことを理由に出場停止処分は免れないものと思われる。


 今回の逮捕で「またか」という空気が流れたのは事実だ。それだけ過去のスミスの行動には問題がある。処罰が許されないとはいえ、49ersの選手管理能力が問われるべきだろう。
 ジム・ハーボウHCが就任してからの49ersは進境著しく、一昨年はスーパーボウル出場を果たし、昨季と3年前はNFC決勝にまで駒を進めた。黄金時代を取り戻しつつある「エリートチーム」であるだけに、規律を厳しくし襟を正す必要がある。

【写真】ロサンゼルス国際空港で逮捕された49ersのLBスミス(AP=共同)