WRデショーン・ジャクソン(イーグルス→レッドスキンズ)、DEジュリアス・ペッパーズ(ベアーズ→パッカーズ)、LBブランドン・スパイクス(ペイトリオッツ→ビルズ)、Sトーマス・デクー(ファルコンズ→パンサーズ)。これらの選手はいずれもこのオフにフリーエージェント(FA)制を利用して移籍したベテラン選手だ。
 彼らに共通していることがあるのだが、お分かりだろうか。それは、同じディビジョンの属するライバルチームに新天地を求めたということだ。


 数多くあるFA契約の中では少数派だが、ディビジョン内移籍は選手とチームの双方に大きなメリットがある。
 選手が移籍を決める際の条件で最大のものは年俸を含む契約内容だが、チームの戦術が自分に合っているかどうかも軽視できない要素だ。


 例えば4―3ディフェンス隊形でDEとしてプレーした選手が、3―4隊形を使うチームに移籍してOLBにコンバートされたとする。パスラッシュについては基本的に同じだが、DEでは片手を地面につけるスリーポイントスタンスが普通なのに対し、OLBはスタンディングポジションでラインアップする。
 さらにDEでは要求されないパスカバーの役割がOLBにはある。こうした違いにアジャストできず、期待外れに終わってしまう選手は意外に多い。移籍先のスキームが自分に適しているかは事前にしっかりと見極めておきたい。


 ディビジョンライバルのチームとはシーズン中に2回対戦するので、スカウティングを通しての知識が多くなり、スキームにも詳しくなる。選手にとってはそのスキームで自分の力を発揮できるか否かをかなり正確に測ることができる。
 移籍先となるチームのアドバンテージはもっと大きい。まず、選手を引き抜くことでライバルチームの戦力を低下させることができる。そして、移籍選手を今度は自分の手駒として使えるのだからこれは有利だ。


 これを実践したのが2007年のペイトリオッツである。それまでの2年間、ペイトリオッツはドルフィンズのキックリターナーに悩まされていた。スピードとクイックネスがあり、どのような対策を練ってもビッグリターンをされてしまう。
 そこで、ビル・ベリチックHCは「どうしても止められないのなら、味方にしてしまえ」と考えてドルフィンズにトレードを持ちかけた。


 通常、同じ地区のライバルチームに選手をトレードすることはごくまれだ。ところが、当時のドルフィンズは、その選手をリターナー以外にはほとんど起用しておらず、ドラフト指名権がもらえるのならしめたものとばかりにトレードに応じてしまう。
 この選手がウェス・ウェルカーだった。ウェルカーはその後7年間、QBトム・ブレイディのトップターゲットとして活躍し、ドルフィンズのみならず対戦するすべてのチームを悩ませるNFL屈指のWRに成長したのはファンのよく知るところだ。


 移籍してきた選手から古巣の内部情報を引き出すことができることもメリットだ。ジャイアンツのトム・コフリンHCはかつて、対戦するチームから解雇された選手と短期契約を結ぶことで知られた。
 対戦後に契約を解除されることが多かったため、情報を聞き出すために一時的に契約をしたものとみられている。 
 NFLにおいて情報戦が重要であることは言うまでもない。ディビジョン内のライバルについては、それこそ手の内を知り尽くすほど熟知している。その知識をフルに活用できるのが同地区内の移籍だ。
 これによってチーム同士のライバル関係はさらに激化する。これもNFLの面白さの一つだ。

【写真】昨季までイーグルスのエースWRとして活躍したジャクソン=2013年(AP=共同)