NFLはアメリカ東部時間3月11日午後4時(日本時間12日午前6時)に年度が替わり、2014年のリーグイヤーが正式に始まる。同時にフリーエージェント(FA)との契約や他球団とのトレード交渉も解禁となり、「補強の季節」がやって来る。


 数あるポジションの中でもQBの需要は常に高く、それは今年も例外ではない。今年の特徴はドラフト候補生に先発が有力視されるタレントが多く、FAはむしろバックアップQBを獲得するのに適しているということだ。FA市場には先発経験の豊富な人材が多くおり、こちらの争奪戦も激しくなりそうだ。


 新たにスターターとなるべきQBを必要としているのはテキサンズ、ジャガーズ、バッカニアーズ、ブラウンズ、レイダーズだ。テキサンズは長く先発を務めたマット・ショーブに見切りをつけるだろう。
 昨年はインターセプトを連発するなど不調を極め、代わったケース・キーナムも連敗を止めることはできなかった。ドラフトで最初の指名権を持っていることもあり、有力なカレッジQBを獲得すると予想される。ビル・オブライエン新HCはQB育成に定評があり、新人の起用に問題はない。


 バッカニアーズ、ブラウンズ、レイダーズはいずれも「フランチャイズQB(チームの顔として活躍するQB)」に恵まれない時期が長く続いている。低迷期から脱するためにも有能なQBを今年こそ獲得したい。
 カレッジ選手で1巡指名が有力視されているのはルイビル大学のテディ・ブリッジウォーター、セントラルフロリダ大のブレイク・ボートルズ、テキサス農工大のジョニー・マンゼルの3人だ。


 ブリッジウォーターはポケットパサータイプのQBで、3人の中では最もNFLに順応しやすいとの評価を受けている。
 ボートルズは196センチの身長が武器で肩も強いが、セントラルフロリダ大が強豪との対戦があまりなかったため、レベルの高い試合の経験が浅いとされる。
 マンゼルは2年前に大学1年生ながらハイズマントロフィーを受賞した逸材で、その運動能力は高く評価されている。近年の大学フットボールの典型である、パスとランの能力を兼ね備えた選手である。


 この3選手を上記の4チームが争うというのが現在考えられるシナリオだ。しかし、指名順位を考えると1番のテキサンズ、3番目のジャガーズ、4番目のブラウンズはほぼ希望の選手が獲得できるが、5番目のレイダーズは希望がかなわないことになる。
 レイダーズはほかの新人QBを発掘するか、FAで人材を獲得するか、または昨年出場のテレル・プライヤーかマット・マクグローインで我慢するしかなくなる。それがいやであれば、2番目指名権を持つラムズに交渉を持ちかけて、指名権の交換(トレードアップ)をする方法がある。


 ただし、トレードアップには複数の1巡指名権(通常は1~2年先まで)が交換条件とされるのが普通だから、補強ポイントが多く、指名権を有効活用したいレイダーズには厳しい条件と言わざるを得ない。レイダーズがどのようなドラフト戦略を練るかは注目に値する。


 FAで目玉となるビッグネームのQBはマイケル・ビックだ。今年で34歳になるが、その脚力は健在だ。パスに不安があり、故障も多いために先発としては獲得しにくい人材だが、QBのランを使うチームならワンポイントプレーヤーとして活躍の機会はある。
 問題はスターターの座にこだわるビックが控えの座と安価な年俸を受け入れることができるかどうかだ。


 マット・キャッセル(バイキングズ)やチャド・ヘニー(ジャガーズ)はそれぞれ他チームで先発としてプレーした経験のあるQBだが、2番手としての地位で活躍の場を見いだした。複数のオフェンスシステムを経験しており、キャリアを積んでいる分だけディフェンスの動きも正確に読み取ることができるからだ。こうした人材は需要が高い。


 先発QBが全16試合に出場できることは稀で、数試合の欠場は覚悟しなければならない。先発QBが復帰するまでの穴を、悪くても勝率5割で乗り切ると計算できるバックアップがいれば、これほど心強いことはない。
 スティーラーズのベン・ロスリスバーガー、ベアーズのジェイ・カトラー、カウボーイズのトニー・ロモのように故障の多いQBを先発とするチームは必ずと言っていいほど頼りになるベテランのバックアップを用意している。


 ショーブのほか、ジェッツのマーク・サンチェスやバイキングズのクリスチャン・ポンダーなど昨年の開幕時にはスターターだった人材もチームから解雇されてFAとなる可能性がある。
 こうしたQBが新天地で先発に挑戦する機会が与えられることもある。こうした状況が、いわゆる「玉突き人事」を起こす。これも競争社会の宿命で、その中でチャンスをつかんだ者だけがスポットライトを浴びる権利を享受できるのだ。

【写真】NFLスカウティングコンバインの練習を見学するテキサス農工大のマンゼル(右)とルイビル大のブリッジウォーター(左)=2月23日、インディアナポリス(AP=共同)