間もなくNFLはフリーエージェント、トレード、ドラフトによる補強の時期を迎える。スーパーボウルが終わったばかりだが、各チームとも自己の戦力分析を行い、補強の必要なポジションを明確にして獲得可能な選手のリスト作成を急いでいる。


 そんな中、2月19~25日の日程で恒例の「スカウティングコンバイン」がインディアナポリスのルーカスオイル・スタジアムで開催された。スカウティングコンバインとは、ドラフト候補生が一堂に会し、40ヤード走や垂直跳び、ベンチプレスなどの体力測定を行うものだ。NFL各チームはHCやGMのほか、スカウトスタッフを派遣して大学選手の身体能力を査定する。


 スカウティングコンバインに参加できるのはNFLから招待された300人あまりの選手のみだ。彼らは40ヤード走ではスピードを、シャトルランでは瞬発力と俊敏力を、そしてベンチプレスではパワーと持久力をアピールする。
 垂直跳びで高い数字を出した選手はその跳躍力を評価される。コンバインで好結果を出したために注目を浴びて、ドラフトで予想以上に早いラウンドで指名を受ける選手も珍しくない。


 今年はサウスカロライナ大学のDEジェディボン・クラウニーが非公式ながら40ヤード走で4秒47の好記録を出したことが話題となった。198センチ、124キロの巨漢がRBやレシーバー並みのスピードを披露したのは驚きで、リーグの公式サイトNFL.comがブレーキングニュース(臨時ニュース)で速報を流したほどのインパクトがあった。
 クラウニーは今年5月に行われるドラフトでトップ5位以内で指名される可能性が高いと評判の有力選手だが、この好記録で彼の価値がさらに上がったと考えられる。ただし、225ポンド(約102キロ)を持ち上げる回数を測るベンチプレスでは、DLにしてはやや物足りない21回に終わった。


 レイダーズの前オーナーだった故アル・デービス氏は、身体能力の高い選手を優先的に指名する方針を持っていたため、このコンバインの数値を重視していた。
 しかし、一般的には選手の能力の一部を表すものではあるが、数値を過信するべきではないというのがチームの捉え方だ。なぜなら、コンバインで行われる計測種目がフットボールに必要とされる身体能力や体の動きとは必ずしも直結しないからだ。


 その代表例が40ヤード走だ。第一に、ヘルメットも防具もつけていない選手のスピードは実際のフィールド上でプレーとは比較にならない。さらに、好タイムを出すためにはスプリント系の走法が必要だが、これはフットボールには向かない。
 RBは重心を低くし、タックルを受けても簡単には倒れないように足幅を広くすることが必要だし、DBは後ろ向きに走るバックペダルのテクニックが重要だ。なによりも、フットボールでは直線で40ヤードもの距離を走りきる場面がほとんどないのだ。


 コンバインに招待された選手は、数値を上げるために特別なトレーニングを積んで本番に臨む。陸上のコーチをパーソナルトレーナーに雇ってスプリント系のランを練習したり、あえて体重を絞ってまで垂直跳びの数値を上げようとしたりする。こうしたトレーニングが実際のフットボールとかけ離れていることをチームはよくわかっている。


 有望株とされる選手の中には、コンバインでの計測に参加しない者もいる。シーズン中の故障が治りきっていなかったり、調整が失敗したりといった理由であえて計測を辞退することがある。
 今年のコンバインではルイビル大学のQBで、1巡指名が確実視されているテディ・ブリッジウォーターは40ヤード走に参加せず、パスも披露しなかった。
 こうした選手は別の機会を設けてNFLチームに実力をアピールする。その機会というのは、大学が主催する「プロデー」と呼ばれるものだ。


 幾人ものドラフト候補生を抱えるメジャーカレッジ(強豪校)はNFLのHC、GM、スカウトをキャンパスに招き、そこで選手の実技を披露する。実技はコンバインのような体力測定ではなく、QBがパスコースを走るWRにパスを投げるドリルであったり、DBがパスカバーするデモンストレーションであったりし、より実際のフットボールに近いもので行われる。
 チームは選手のフィールド上での本来の姿に近い動きを視察することができる。選手も、慣れ親しんだフィールドでチームメートとともにパフォーマンスできるため、リラックスして実力を発揮しやすい。最近ではコンバインよりもこのプロデーを重視する選手が多い。


 スカウティングコンバインには身体能力の判断以外に、もう一つの重要な側面がある。それは、選手のパーソナリティーを見ることだ。
 コンバインの期間中、選手たちはメディアのインタビューを受け、さらに個別にチームと面談する。インタビューの受け答えはチームスタッフにモニターされており、自分に都合の悪い質問を受けたときの態度などが観察される。


 ミズーリ大学のDE/LBマイケル・サムは、コンバインの数週間前に自分が同性愛者であることを公表した。コンバインでは当然そのことにも質問が及んだが、サムは臆することなく、ときに笑顔を交えて真摯に答えて評価をあげた。
 チームとの面談ではHCやGMと直接話す機会が与えられる。ペイトリオッツのビル・ベリチックはわざと選手がミスをした映像を見せ、その解説をさせるそうだ。謙虚に自分のミスを認めればいいが、失礼な応対に怒りを見せたり、チームメートやコーチの指導のせいにしたりするような選手はすぐにリストから除外するという。


 これらは選手の性格をできるだけ正確に把握するためのものだ。フットボール選手として優秀であっても、フィールド外でのトラブル、特に法を犯す行為がある選手は敬遠される。せっかく獲得して高い年俸を払っても、フィールド上で活躍できない可能性があるからだ。
 その代わり、過去に逮捕歴があったとしても、しっかりと反省し、更生していると判断されれば中~下位ラウンドで指名を受けることは可能だ。


 ドラフトでは選手の運動能力だけでなく、人格、練習態度、プロ入りしてからの伸び代の有無などが総合的に判断される。その判断力に優れているチームが将来にわたって活躍するいい選手を発掘することができる。この判断力もチームの重要な戦力の一つだ。

【写真】40ヤード走で4秒47の好記録を出したサウスカロライナ大のDEジェディボン・クラウニー=24日(AP=共同)