ラグビー・ワールドカップ(W杯)で人々の記憶に残り、伝え継がれるプレーの数々。その多くはクリエイティブな、もしくは目を疑うような華麗な攻撃だろう。しかし、オーストラリア代表は10日にトゥイッケナム競技場で行われた対ウェールズ戦で、定評のある攻撃ではなく完璧な「汝、抜かれことなかれ」と言わんばかりの魂を込めたディフェンスを展開。地味な防御もスタジアムの記憶に残ることを証明した。

長い長い終盤の12分間だった。オーストラリアは後半、一時退場で一人、そしてまた一人と失い、厳しく攻め立てるウェールズを相手に13人の劣勢で立ち向かった。リードはたったの6点。1トライ、ゴールで逆転される僅差だ。ウィル・ゲニアとディーン・マムの2人がイエローカードを受け一時退場、そしてデービッド・ポーコックがけがのためタッチラインに引き下がっていた。

ウェールズは13人の相手にラインアウトやスクラム、そしてピックアンドゴーの攻撃を止められるはずはないと踏んでいた。しかし、7分間、2人少ない状態の相手を何としても崩せない。ウェールズのアタッカーは外側を抜くことも、真ん中を突き抜けることもできなかった。「トゥイッケナム包囲攻撃」に身を投げ出してラインを死守する鉄壁の守りは最後まで崩れず、敵将のウォーレン・ガットランド監督が「英雄的だった」と激賞した。サム・ウォーバートン主将も「勝つためにはトライを取らないといけないと感じていた。6点を追いかける立場で、2つのペナルティーを得て自分たちに勝ち目があった。13人相手、どのチームでも超えられたはずなのに。素晴らしい守りに降参するしかない」。W杯史上に残る攻防戦を守り切った対戦相手をたたえるしかなかった。

日頃は手放しの賞賛を贈ることはないマイケル・チェイカ監督でさえ、チームのプレーに感激したと認めざるを得なかった。「恥ずかしがらずに、選手たちをとても誇りに思うと言える。あの回復力、やり遂げようという心意気をたたえたい。あまり才能のないFWだっただけに、今夜の試合は気に入った。才能どうのこうではなく、一つになって互いに助け合う気持ちが出ていた」

オーストラリアは18日、準々決勝でスコットランドと対戦することが決まった。決勝まで南アフリカ、そしてニュージーランドとの対戦を回避できたが、チェイカ監督はそこまでの道のりが平たんになったわけではないと話す。「スコットランド代表のバーン・コッターは賢明な監督だということ。フランスでも成功を収めているが、これは英語圏の人には難しいことだ。トーナメント戦の試合に向けた準備を万全にしてくるだろう」。大きなヤマ場だった試合を乗り越え、勝ってかぶとの緒を締めていた。

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