ウェールズの“隣国”との134年に及ぶ輝かしい戦いの歴史の中で、「ドラゴンズの不屈の精神」をこれほどまで如実に表した夜があっただろうか。

主将のサム・ウォーバートンは、トゥイッケナムの情熱的な観衆を相手に、逆境の中で生まれた28−25の劇的勝利が、ウェールズのラグビー史上、最高のものの一つだと感じている。

元イングランド代表主将でワールドカップ優勝経験のあるマット・ドーソンは、イングランドの敗戦をぼうぜんと見守りつつも、試合に感銘を受け「ウェールズにとって、これまでで一番大きな勝利だ」とたたえた。

後半10分をすぎて、イングランドが10点をリード。大会前に主力選手が故障し、この試合中にもリアム・ウィリアムズ、スコット・ウィリアムズ、ハラム・エーモスが負傷したウェールズを相手に敗れた。トゥイッケナムの観衆は信じられない様子だった。

残り数分での一つの「判断ミス」がやり玉に挙がりかねない。史上初めて母国開催でのパーティーから、準々決勝にたどり着く前に、戦いの舞台からはじき出される可能性が現実味を帯びている。

右タッチラインから5㍍の位置でペナルティーを得たイングランド。3点差の場面 で主将クリス・ロブショーとオーウェン・ファレルが下した決断は、逆転トライのためにボールをタッチへ蹴り出し、ラインアウトで再開するというものだった。

日本が南アフリカ戦で見せた「ギャンブルに賭けるロマンス」が成功したからといっても、ほとんど理屈に合わないものだった。

「現実主義」こそ、この夜に一番求められることだった。もしPGをファレルがミスしたとしても、ドロップアウトからポゼッションを奪い返すこともできた。スチュアート・ランカスター監督は「大きな決断だった。でもそうするのなら、決めなければいらない」

ラインアウトで、ウェールズはイングランドボールのモールをタッチライ ンへ押し出した。ウォーバートンは「選手には何も言う必要はなかった」と振り返る。「あの時点ではもうテクニカルな話ではなく、昔ながらの根性と勝利への欲求 が全てだった」

イ ングランドのサム・バージェスを先発で使うという大きな賭けは、後半30分で彼が後退した際、7点リードしていたことで「吉」と出ていたように見えた。だが皮肉なことに、残された時間こそ、バージェスの守備力が一番必要な時間だった。

ホームチームのイングランドは、ウェールズが困難に直面していた時間帯にとどめを刺せなかった。「たくさんの人々を落胆させてしまった。これからは本当に心の強さを試される」とロブショーは話した。

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