2015年第1ステージを最下位で終えたクラブは今夏、大型補強に踏み切った。獲得のポイントは(1)点取り屋(2)1対1に強いセンターバック(3)ゲームメーカー。多岐にわたる大改革を一度に敢行しようとした。FWに元北朝鮮代表の鄭大世、DFにJ1川崎の角田を迎えた。しかし、ゲームメーカーについては、複数人と接触して高額年俸も提示したが、獲得できなかった。  長期ビジョンの欠如による“ツケ”が窮地で重くのしかかった。試合をつくり、攻守の要となる選手はチームがどんな状況にあっても不可欠だ。左伴社長はJ1復帰へ「主軸となる選手を残す。強化費の規模を落とさない。トップが絶対に(J1へ)戻ると言い続ける」の3カ条を挙げるが、「その主軸は誰か」との報道陣の質問に明確な回答はない。だれが監督に就いても司令塔は本来、クラブが我慢してじっくりと育てるものだ。  司令塔候補がいない訳ではない。スムーズに世代交代できず、ベテランを一気に放出して若手主体となったことで、河井や石毛は1年目から出場を続けた。その後、チーム事情でサイドバックなどに使われ、今季終盤はベンチを外れることも目立つ。石毛は「G大阪の遠藤さんなどボールを預ければ何かを起こすという選手が中盤にいるチームは強い。清水で育った自分がもっとしっかりしていれば」と唇をかんだ。  球際の強さや走力を武器にする相手が増えるJ2で、かつてのように輝く清水のサッカーを取り戻すのは容易ではない。だが、絶対的な司令塔がいるG大阪は、J2から1年で再浮上し、たくましさを増してJ1で頂点にまで駆け上がった。  23年間J1で戦い抜いてきた清水には、他がうらやむ伝統という財産がある。“ミスターエスパルス”と呼ばれた沢登正朗氏は言う。「サポーターが納得するサッカーをもう一度築き上げ、どん底からはい上がってほしい」