22日午後4時45分(日本時間午後9時45分)から行われる男子回転に、北斗市出身の佐々木明(32)=ICI石井スポーツ、北照高出=と、札幌市出身の湯浅直樹(30)=スポーツアルペンク―道東海大=が出場する。2人とも「恩返し」を胸に臨む五輪。競技生活の続行が危ぶまれたときに、それぞれを支えてくれたのは、友人やスキー板メーカーだった。

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 「2月の世界選手権に行く金がない。頼む。助けてくれ」。昨年1月下旬、中学時代からの友人で札幌市のプロスキーヤー井山敬介さん(35)に一本の電話がかかってきた。

 4度目の出場となる今回の五輪を最後に、第一線の選手生活に区切りをつけるつもりでいる佐々木からの電話だった。2年前にナショナルチームを外れ、経済的な苦境に陥っていたという。

 「任せとけ」。井山さんは、会社経営者や元アルペン選手など片っ端から支援を求めた。

 ナショナルチームを外され、佐々木の生活はがらりと変わった。欧州遠征で自ら車を運転した距離は900キロ。リフト券代、宿泊費、レンタカー代などはすべて自己負担だ。佐々木は「メシを食えない日もあった。食べれば翌日のガソリン代を出せなかった」と振り返る。

 井山さんは2年前、遠征先のニュージーランドの合宿で、佐々木の生活を目の当たりにした。狭い屋根裏部屋で、昼食は野菜を挟んだだけの手づくりサンドイッチ。「体を休めることもトレーニングの一環なのに、これがメダルを目指す選手の生活なのか」

 集まったお金は、1カ月弱で約270万円。井山さんらが中心の団体「SK1」からの30万円を加え、合計300万円。SK1は、子供たちにスキーの楽しさを伝える団体で、30万円は活動資金に充てるはずだった金だ。

 井山さんは「実力があるのに、お金がないから諦めるなんて悔しいでしょう。そんな明を見たくなかった」と支援の理由を語る。

 支援の結果、出場できた世界選手権では総合19位。今季はナショナルチームに復帰できた。母満智子さん(65)は「苦労した分、ハングリー精神というか、少し謙虚というか、大人になったようだ」と変貌に驚く。

 「本当の感謝の意味が分かった。恩返しには、ぶっちぎりの成績を出すしかないんです」と佐々木。熱い思いを胸に本番を迎える。