【ソチで運動部・遠藤享】「泣いても笑ってもきょうが五輪最後のレース。全力を出し切ることに集中する」。トップと1分5秒差、目標のメダル圏内にも40秒差と出遅れる中、永井秀昭(岐阜日野自動車、盛岡南高-早大)は後半距離で力走した。チームのトップを切って走り、9秒差で前を行く5位のチェコを抜いて2走にリレー。「絶対にメダルも諦めない」と全てをぶつけた。

 前半飛躍でリードし表彰台を狙うはずだった日本。しかし18日の個人ラージヒルでジャンプ好調の加藤大平が転倒し戦線を離脱。メンバーを代えて臨んだが、前半6位と苦しい展開になった。「僕らは(W杯などで)1年の半分以上を一緒に過ごす家族みたいなもの。誰が出ても頑張ろうと誓った」と渡部暁斗。4人は加藤の無念も胸に戦い、永井は加藤のゴーグルをつけて前半飛躍を飛んだ。今大会自身最長の123・5メートル。「今、自分ができる精いっぱいのジャンプはした」

 とにかくがむしゃらに走った五輪の3試合だった。12日の個人ノーマルヒル、18日の個人ラージヒルともジャンプで好位置につけられず、得意の後半距離は最初から全力で飛ばすしかなかった。

 長丁場のワールドカップと違いこの日、この時に自分の力を発揮できた選手が栄光をつかむ世界。初の五輪で味わったのは「4年間の全てをこの一日に持ってくるのが本当に難しい」という悔しさだった。メダル獲得はならなかったが、最後まで全力を尽くした永井。「まだまだ成長している実感がある」と話す30歳は、この経験をばねにさらなる飛躍を遂げるはずだ。