空飛ぶ円盤のような形をした「ボリショイ・アイスドーム」が超満員の熱狂に包まれました。ソチ冬季五輪の入場券で地元ロシアの人気が高い競技の一つが「氷上の格闘技」と呼ばれるアイスホッケーです。15日の男子1次リーグ、米国―ロシアは「因縁の対決」としてプーチン大統領も応援に駆け付け、異様な盛り上がりとなりました。

東西冷戦時代の1980年レークプラシッド五輪で学生主体の地元米国が、当時無敵を誇った旧ソ連を4―3で破った歴史的な大金星「ミラクル・オン・アイス(氷上の奇跡)」の雪辱戦と位置付けられたからです。98年長野五輪からトッププロが参加する近年は当時と状況が違いますが、この実話に基づく映画「ミラクル」も後につくられ、話題を呼びました。

元代表GKで今大会開会式の聖火リレー最終走者を務めたロシア連盟のトレチャク会長は「最も忘れがたい試合」と振り返ります。旧ソ連時代は4連覇した「最強時代」があり、ソチ五輪組織委員会のチェルニシェンコ会長が「ロシアでアイスホッケーは文化であり、宗教みたいなもの。“氷上の奇跡”をテレビで見た当時は11歳だったけど、全員の選手の名前と顔が今も心の中にある」と少年のように目を輝かせたのが印象的でした。

巨大なドーム会場の屋根は夜になると、試合の途中経過や結果がカラフルなライトアップで映し出され、アイスホッケーを愛する派手な演出にも驚かされます。ロシアの同性愛宣伝禁止法などを背景にオバマ米大統領が開会式を欠席した中、二大スポーツ大国の試合はロシアが米国に延長、ゲームウイニングショット(GWS)の末に敗れました。

そのショックを引きずるように、開催国として金メダルを宿命づけられたロシアは準々決勝でフィンランドに1―3で敗退。ソチに舞台を移し、時代を超えて新たな「氷上の奇跡」は起こりませんでした。(ソチ共同=田村崇仁)