20代が大半を占める中で、なぜ41歳の葛西が銀メダルを獲得できたのか-。それは「揚力を世界一得られる」と評される独特の空中姿勢と、若手のトップ選手に劣らない強靱(きょうじん)な体力があるからだ。

 葛西のジャンプで最大の特長が「カミソリ・サッツ(踏み切り)」。低い前傾姿勢で鋭く飛び出し、速さと勢いで、序盤の飛距離を稼ぐ。かつて世界を席巻し、代名詞にもなった手法だが「主流ではない」と横川朝治コーチは言う。追い風だと、飛び出しが低いため、高く飛んだ場合より、風を受ける時間が少なくなる弱点があり、いまや少数派となっている。

 だが、葛西は「小さいころからやっていて変えられない」という。だから、これを独自に磨いた。特に工夫したのが、手と脚の広げ方だ。

 脚をV字に開く際、V字の面が大きいのが特長。他の選手よりも幅広にすることで、風を受ける表面積を増やすことができる。自身が「モモンガ」と表現する独特の飛び方が距離を稼いだ。

 ただ、これはもろ刃の剣でもある。横川コーチは「他の選手より脚を広げた格好は不安定。かつ風の影響も受けやすく、普通は体がばらつく。世界的に珍しがられる」と説明。非常に高度な技術に裏付けられていることを明かした。

 また、10代から20代半ばにかけて猛練習で培った体力も生かされている。午前中に走り、午後に筋力トレーニング、夕食後に体幹を鍛える3部構成。今は全盛期より筋力も瞬発力も衰えたが、土屋ホームの中西康隆トレーナーは「若い選手と遜色ない」と驚くほどの体を備えている。

 磨き抜いた技術と体力が光った葛西の銀メダルだった。 (対比地貴浩)