【ソチ=本社五輪取材団】ソチ五輪第九日の十五日、一九九二年のアルベールビル五輪以来、七大会連続出場の葛西紀明(41)=土屋ホーム=がノルディックスキー・ジャンプ男子ラージヒルで銀メダルに輝いた。ジャンプの表彰台は一九九八年の長野五輪以来十六年ぶり。主将を務める日本選手団に今大会五個目のメダルをもたらした。冬季五輪で日本の最年長メダリストとなった。 

 「レジェンド(伝説)」と呼ばれる競技人生に、輝かしい節目が訪れた。銀メダルの表彰台。少年のように跳びのり、ソチの夜空に祝福の花束を突き上げた四十一歳は言った。「僕は、スキー・ジャンプを愛しています」

 葛西紀明の伝説は二十六年前に始まる。十五歳の時に札幌で行われた大会でテストジャンパーを務め、大人の大会優勝者の飛距離を上回った。以降、天才と呼ばれた葛西は十九歳でアルベールビル五輪に出場、次のリレハンメルでは団体銀メダリストになった。

 根性の据わりようも伝説的だ。「よく、血を吐くような練習と言うけど、僕は若いころ、血を吐いたことがある」。例えば両手に五キロずつダンベルを持ち、六段の跳び箱にジャンプして乗る練習。それを百回連続で成功するまで続けた。

 すべては「飛んでいることが楽しく、勝つことが快感だから」。そんな葛西に屈辱的な経験をもたらしたのが九八年の長野五輪だ。

 金メダルで日本中が歓喜に沸いた団体。だが葛西は補欠の扱い。大会前には、放火に巻き込まれた母を亡くした。五つ年下の妹は難病に侵され、今も闘病中だ。葛西は「母や妹のつらさに比べたら、自分の苦しみなんか小さい」と歯を食いしばってきた。

 栄光と挫折、そして非運に彩られた競技人生は、ついに銀メダルに結実した。葛西は言った。「涙を出す用意をしてましたけど、やはりゴールドメダルじゃないと出ないですね」

 まだ、伝説は終わらない。 (ソチ・杉藤貴浩)