自身が演じた「火の鳥」のようにフリーで飛躍した。ソチ五輪フィギュア男子で、ショートプログラム(SP)11位から5位に上げた町田樹選手(関大、翠松高出)。高橋大輔選手に憧れて同じ高校、大学に進んだ23歳は夢舞台で熱演し、その偉大な先輩も超えた。

 「大ちゃんの後ろを追うだけじゃ、五輪には行けない」。4年前、大学で行われたバンクーバー五輪の壮行式。ステージ上の高橋選手を見上げ、はっと気付かされた。それから米国に拠点を移し、外国人コーチに師事するなどスケーターとしての個性を求めた。

 手探りで理想像を追う中で支えにしたのは、SP曲「エデンの東」の原作にある「ティムシェル」という言葉だ。「自分の運命は自分で切り開く」と解釈し、己を信じ切る強い心を養った。激しい代表争いを勝ち抜き、初の五輪でも攻めの滑りを見せられたのは、そんな背景があった。

 青を基調としたソチのリンクに、ひときわ映える真っ赤な「火の鳥」。メダルまで、わずか1・68点届かなかったが「最後まで戦い抜いた自分を誇りに思う」。掛け替えのない経験が、次の一歩を踏み出す力になる。