五輪の舞台でSP3桁の壁を破った。「こういう素晴らしい舞台で100点超えなんて。考えてもみなかった」。普段は見せないガッツポーズ、それも特大のを見せた。

 演技前の6分間練習。音楽を聴きながら細かく体を動かす様子はいつも通りだが、表情から緊張しているのは明らかだった。「団体戦とは全く違う。足が震えるほど」。しかし、ゲイリー・ムーアの官能的なギターの調べが響くころには19歳が戦士の顔つきに戻る。

 冒頭の4回転ジャンプを完璧に決めると、曲調の転換点となる3回転半でも高い加点を得る。不安定だった3回転ルッツからの連続ジャンプもきちんと決め、情熱的なステップは皇帝プルシェンコのまさかの棄権で沈み込んでいたロシアの観衆を沸き立たせた。

 毎年プログラムを変える選手が多い中、羽生はシーズン前に振付師と話し合った上で「パリの散歩道」を2年連続で選んだ。「賢い選択だった」と話すのはオーサー・コーチ。基礎点が1.1倍になる後半に2種類のジャンプを跳ぶ極めて難易度の高い演技構成だが、2年掛けて完全に手中にしている。だからこそ大舞台の緊張の中でも自分の演技を貫ける。

 世界王者チャンとの今季4度目の対決。初めて勝った昨年12月のグランプリ(GP)ファイナル(福岡)ではSPで12.37点差をつけ、フリーでも上回った。今回は3.93点差。「きょうはきょうで終わり。明日は明日で自分ができることをやるだけです」。冒頭2種類の4回転ジャンプに成否が懸かるだろう。(ソチ=安住健郎)