フィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)で、羽生結弦(ANA)が史上最高得点を塗り替えて首位に立った。ともに納得できる内容ではなかったが、高橋大輔(関大大学院)は4位につけ、町田樹(関大)も11位ながらメダルを狙える得点差をキープしての出足となった。

 第2組が演技を開始する直前、アイスベルク・パレスを埋め尽くした観客席から大きなため息が上がった。7番でこの組のトップに登場するはずのエフゲニー・プルシェンコが棄権することを決めたからだ。彼はロシアを代表する名スケーター。過去3度の五輪で金1、銀2個のメダルを獲得し、ソチでも新種目、団体の優勝に貢献していた。その大黒柱が練習で腰を痛め競技するのは無理と判断、メダル争奪戦から突然姿を消したのだ。

 波乱含みの様相となった。だが、幼いころからプルシェンコを「僕のヒーロー」と崇拝してきた日本のエースとはいえ、この際そんなことはお構いなし。それどころか19番目の羽生は完ぺきといっていい出来栄えを示した。売り物の4回転ジャンプは高く、シャープに決まり、国際大会のSPでは史上初の大台超えとなる101・45点の完ぺき演技。大きな拍手と歓声を浴び、「本当にうれしかった」と満足げな笑みを浮かべた。

 高橋は冒頭の4回転ジャンプが両足着地となり、「自分の滑りはできなかったけど、精いっぱいはやれた。戦いはまだ終わっていない。あした(フリー)も自分ができる最高のパフォーマンスを目指してやるだけ」と言った。落ち着いた語り口にバンクーバー大会の銅メダリストらしい自負がのぞいた。逆に町田は闘志を前面に押し出した。2度のミスを悔やみながらも、3位のスペイン選手とは3・50点の差に着目し「フリー次第ではメダルに手が届く位置にいると思う。絶対に諦めずに進む」と逆襲を宣言。

 優勝争いは羽生とこの日2位につけたパトリック・チャン(カナダ)にほぼ絞られたと見ていいだろう。フリーは14日午後7時(日本時間15日午前0時)から行われる。日本勢は3組18番で町田、4組20番で高橋、21番で羽生が登場する。注目されるのはチャンが羽生の直後に演技すること。2人の差は3・93点。逆転も可能なこの局面で、羽生が持てる力を全て出し切れるか。世界選手権3連覇のチャンを精神的にも追い詰めることができれば、日本の今大会金メダル第1号が誕生する可能性は大いに高まる。

 「きょうはまず(高得点を)喜んで、あした(フリー)に向けてしっかり体を休め、いい演技をしたい」。羽生の言葉から気負いや緊張はうかがえなかった。競技終了は午前4時過ぎ。日本列島に寝不足の人たちがどっと出そうだ。

(47NEWS 岡本彰)

岡本彰 1947年生まれ、北海道出身。共同通信の運動部で記者、デスク、部長などの立場から1972年札幌五輪以来多くの大会報道に携わった。記者としてはスキーなどを担当し、現在は47NEWS。