近くに見えた表彰台。そこに立つのは容易ではなかった。前回バンクーバー大会は1000、1500メートルでともに5位。女子500メートルに臨んだ小平が、またしても夢を絶たれた。込み上げる悔しさと悲しみ。世界の壁は、やはり厚かった。

 最初の100メートルは1回目が10秒44、2回目は10秒37とスタートはまずまず。今季はパワーが求められるソチの低地リンク対策として、筋力アップにも励んできた。持ち味の低い体勢は安定感を増し、より確実にカーブで氷をつかめるはずだったが、思うように加速せず1回目は7位。逆転でのメダルを期した2回目も、5位に食い込むのがやっとだった。

 2度目の五輪。滑りは最高の状態に仕上がっていた。昨年は500メートル、1000メートルともに日本記録を更新。ソチ入り後の記録会では37秒93の好タイムをマークした。「冷静に熱くいきたい」。手応えをつかんで、リンクに立った。

 長野県茅野市出身。中学時代から逸材とされた実力者だが、高校卒業後は教員になる夢を捨てきれず、実業団の誘いを断った。

 男子500メートルの五輪覇者、清水宏保氏を育てた指導者がいる信州大の教育学部に進学した。

 学業では大学スポーツにありがちな単位取得の特別な配慮はなかったが、卒業論文で有力スケート選手の「カーブ動作解析」をまとめた。理論でも自身の力を肉付けして飛躍。日本女子短距離のエースに君臨する。

 前日の10日には、男子500メートルでメダル獲得が有望視された長島と加藤が、ともに表彰台を逃した。関係者の期待を一身に背負った小平だが、悲願はならず。自信を持って挑んだ分、失意の色も濃かった。 (小杉敏之)