魅力でもあり欠点でもあるむらっ気はそのままに4年間を過ごしてきた銀メダリストが、ここ一番で集中力を爆発させた。長島の1回目。最初の100メートルを出場者中トップの9秒53で入った。

 二つ目のコーナーを抜ける直前にバランスを崩して同走者に先行を許したが、足を伸ばす執念のフィニッシュで34秒79。全て完璧にいかないところも長島らしいが、2大会連続メダルの可能性を2回目につないだ。

 ここ数年の課題だったコーナーワークを磨くため、昨夏はショートトラックの代表合宿に参加。これまでも試みてきた取り組みだが「前年の10倍くらい」という長い時間を割いた。

 目指したのはスピードを保つ滑り。スケート靴の刃で氷を長くとらえて推進力を増やす技術を磨くため、ショートトラックでその感覚を体にたたき込んだ。加えて長距離系の練習が多いため「1年間戦える体力づくり。やっているだけで体力も根性もつく」。

 指導してきた所属先の今村俊明監督は「身体能力では上の選手が山ほどいる。長島は普通だけれど、センスが抜群」と話す。世界で参考にする選手も多いフォームの良さが持ち味だが、自分では「どこを見て言っているのかわからない。もっとうまくなりたい」。才能の上に、技術を探求し続ける気持ちが重なり、誰にもまねできない滑りを生み出した。

 フィニッシュ後も表情はほとんど崩さず。土壇場で理想の滑りに近づいた充実感を押し殺し、勝負の2回目に向かった。

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 頂点を極めるためには倒さなければならない相手に敗れた。

 加藤は1回目、前回の金メダリスト牟太〓(モ・テボム、韓国)と同走。100メートルで0秒02先行しながら、終盤の追い上げに屈した。辛うじて35秒を切ったものの、次の組のライバル長島らにも抜かれて5位。表情には失望の色が浮かんだ。

 五輪の頂点を目標に掲げながら「自信はない」と言い続けてきた。「いくら実力があっても、狙った大会で金だとかメダルを取ることは本当に難しい。10%とか少ない確率に、本気で挑んでいくというスタンス」

 今季のW杯は8戦で優勝者が7人も出た。それだけの選手が競り合った力を持つ状況で、いかにソチの本番で力を出すか。加藤は4年間、ここという試合に最高の調子を合わせる「ピーキング」の精度を高めようと研究を重ねてきた。

 試合のたびに激しい練習の時期や強度を変えた。回復する時間やレースでの感覚、滑りなど、データを積み重ねて分析し最良の方法を探ってきた。

 1回ごとに方法を変えれば当たり外れがある。疲れがたまったまま試合を迎えたり、数日早く好調が訪れたり。成功と失敗を繰り返しながら、体調に応じてベストの状態に導くための引き出しは確実に増えた。

 五輪前最後の試合となった昨年末の全日本選手権では1、2本目ともにただ一人の34秒台で優勝。「確率はある程度上がっている」と手応えをつかんでソチに乗り込んだはずだったが、1回目は全てがかみ合ったとは言えなかった。 (海老名徳馬)