冬季五輪が開幕したロシア・ソチ市と熱海市をつなぐ一本の木が熱海港そばの親水公園にひっそりたたずんでいる。四十一年前、当時のソチ市長が熱海市を訪れた際、記念に植えられたオオムラサキツツジ。温泉や別荘地で共通する両市で姉妹提携の機運があったことを物語る「証人」だ。

 ツツジは高さ一・五メートルで毎年五月ごろ開花する。かつて国道沿いの観光スポット・お宮緑地にあった。常緑樹ジャカランダの並木道の整備に伴い昨年秋、歩いて五分の親水公園に移された。木の横の案内板に、一九七三(昭和四十八)年五月にソチ市長が熱海市を訪問した記念とある。

 市民でも知る人は少なく、市は五輪開催を契機に情報を集めだした。今のところ、誰が植えたのか、ソチ市が贈ったものかも分かっていない。

 四十一年前の地元紙の記事が、当時の状況を知る手掛かりだ。記事などによると、交流のきっかけは六〇年にモスクワであった日本観光見本市。三人の熱海市議が「熱海に似た保養地がある」とモスクワのほかにソチ市を視察したのが始まりだ。六七年にはソチ市長が熱海市を訪れて姉妹提携のラブコールを送ったが、市は社会主義国のため二の足を踏んでいたという。

 ソチ市長は七三年にも熱海市を訪れ、当時の社会党熱海支部は提携を市に要望したが実らなかった。その三年後に熱海市はイタリア・サンレモ市と姉妹提携しており、議論に影響を及ぼした可能性もある。

 後に社会党の熱海市議を務めた笹嶋洋(ひろし)さん(66)=熱海市上多賀=は「五輪で脚光を浴びている今と違い、当時のソチは遅れていた。今さら市の判断がどうだったとは言えない」と話す。

 姉妹にはならなかった両市。それでもツツジは、ソチ市長の熱海訪問を歓迎した友好の証し。笹嶋さんは「これからの日ロをあたたかくつなぐ象徴に」と願う。

(斉藤明彦)