【ソチ=報道部・木村敏郎】ほろ苦い五輪デビューだった。今季、日本長距離界に彗星(すいせい)のごとく現れたウィリアムソン師円(山形中央高3年)。予想をはるかに超える成長を遂げ、そしたつかんだ夢舞台では力を出し切れず、「雰囲気にのまれた」と表情はさえなかった。

 バンクーバー冬季五輪男子1万メートルで金、5000メートルで銀を獲得した李承勲(イ・スンフン)が最終組に控えていた。李とは昨年6月の韓国遠征で陸上トレーニングを共にし、執拗なまでに自らを追い込む姿に感銘を受けた。飛躍の武器となった後半の粘り強さは李から学び取ったスタイル。同走者はくしくも李と同じ韓国選手。「打倒韓国」を目標にしてきたウィリアムソンにとって、今の実力を計る格好の相手だった。

 だが、初出場の重圧が重くのしかかった。2日前、急にレースが迫る緊張に襲われ「事前ドーピングに引っ掛かる夢を見た」。硬さが取れぬまま、号砲は鳴った。序盤は互いに出方を探るような展開。相手も前には出ず「先に出ようか迷いが生じた」。不慣れな先行レースに打って出たが、地力に勝る相手にかわされた。最後は懸命に腕を振りゴールに飛び込んだが、自己ベストには遠く及ばず「(自信のあった)ラストスパートが通用しなかった」。世界との差を思い知った。

 だが、この苦い経験は次への序章にすぎない。不振にあえぐ日本長距離界をチームメートの一戸誠太郎、さらに小川拓朗(北海道・白樺学園高)らと復活させ、けん引する使命を自覚する。期待を背負う18歳の若武者は、こう宣言した。「4年後、8年後の五輪で、支えてくれた人に恩返ししたい」