ソチ冬季五輪は6日、開会式(7日)を前に日本期待のフリースタイルスキー女子モーグルの予選1回目を行い、5度目の五輪出場で悲願のメダル獲得を目指す34歳の上村愛子(北野建設)が7位となり、8日の決勝に進んだ。

 ターンに緩みがなく無難に滑り切った。両手を上げてガッツポーズでゴール。「やりたいことはできた」と納得の滑り出しだったが、右膝の負傷で棄権した北野建設の同僚、26歳の伊藤みきを気遣った。「一緒に練習してきた仲間、すごく悔しいだろうな」。昨年の世界選手権で銀メダルに輝き、上村の「後継者」として名乗りを挙げただけに心配だろう。今は後輩の無念をぐっと胸にしまい、「最後のチャンス」となるだろう五輪の決勝に気持ちを集中することだ。

 2010年2月、雨のバンクーバー大会を思い出す。上村は予選を5位で通過した。決勝はゴールした時点で、4人を残して2位につけた。表彰式に備えて上位3選手がゴール付近で待機している。その中に上村がいた。次の2選手が失敗。「あと1人、ミスをすればメダルが…」。褒められた話ではないが、筆者は外国選手の失敗を念じた。しかし、残る2選手の得点が上回って、上村は4位。「願い」はかなわなかった。

 1998年長野大会に高校生で初めて出場してから、順位は7、6、5、4位。雨が勢いを増し、凍えるような寒さの中、取材記者が待つミックスゾーンに、ようやく上村が現れた。「なんでこんな一段一段なんだろう」と涙をぬぐった。あまりにも正直な感想に、こちらもぐっときた。

 あのときの涙を、今度こそ笑顔で終わらせてあげたいと思う。決勝方式が変わって1回目で20人から12人、2回目で6人と選手を絞りこみ、3回目にメダルがかかる。体力も必要で、道のりは決してたやすくないが…。

 フィギュアスケートは新種目の団体がスタート。最初の男子ショートプログラム(SP)で19歳の羽生結弦(ANA)が見事な「初陣」を飾った。最終滑走者として堂々と演技。全てのジャンプを成功させ、97・98点でロシアのエフゲニー・プルシェンコ、カナダのパトリック・チャンの実力者を上回ってトップに立った。「できることをしっかり頑張れた」とコメント。個人戦の活躍がますます楽しみになってきた。ペアSPで高橋成美、木原龍一組(木下ク)の得点が伸びず、日本はこの日4位につけた。

(共同通信編集委員 原田寛)

原田寛[はらだ・ひろし]のプロフィル

1956年秋田県生まれ。共同通信ではスキー、テニス、五輪などを取材。冬季

五輪は1994年リレハンメルから2010年バンクーバーまで4大会を取材。

運動部副部長、大阪運動部長を経て現在、編集委員。