五輪取材に双眼鏡は欠かせません。選手の一瞬の表情やしぐさは、時としてそれ自体がニュースになることも。サッカーや陸上など会場が広い競技の場合、選手の笑顔や涙を肉眼で捉えるのは至難の業です。  でも、用途はそれだけではありません。28日の女子サッカー、日本―スウェーデンで、私が一生懸命眺めていたのは「なでしこ」たちではなく、その奥の観客席。実は試合そっちのけで、選手のご家族を探していました。  4年に一度の大舞台に懸ける選手たち。そばで支え続けたご家族にとっても、五輪は一生に一度あるかないかの晴れ舞台です。「見ていてハラハラドキドキした」「こんな舞台でやれるなんて娘は幸せ」。試合後にお聞きする感想には、短くても万感の思いが詰まっています。  ところが、日本を出発する前に現地の競技場で会う約束を取り付けていても、なかなかスムーズには会えません。「この携帯電話は海外でも使えるから」と番号を教えてもらっても、いざかけてみるとうまくつながらなかったりして…。  「時間や場所をもっと細かく決めておけばよかった」。やむなく、競技場の外や通路をさまよう羽目になります。そして、最後の手段が双眼鏡。そういえば昔、「NHK紅白歌合戦」で野鳥愛好家がこんなふうに会場の審査結果を数えていたっけ。  そうした苦労の末にご家族にたどり着くと、気分はもう“運命の再会”。普段はしないのに握手を交わしたりして、話も一気に盛り上がります。  ところで、応援の仕方もその家その家で個性があります。わが子に届けとばかりに声援を送ったり、息をのんで見守ったり。  印象的だったのが、なでしこジャパンのGK福元美穂選手(28)の父幸雄さん(62)。「サッカーのことは全然分からないよ」と話し、25日のカナダとの初戦では、日本が2点リードした前半こそ静かに戦況を見つめておられましたが、1点を返された後半、いつの間にか席を立っていました。  人けの少ない通路で、所在なげにたたずむ幸雄さん。「落ち着いて見ていられなくて」。ゴールを守るわが子の重責を、一緒に背負うかのような後ろ姿。愛情がひしひしと伝わり「これも一つの観戦スタイルなんだな」と感じました。(ロンドン共同=武生真悟) ...[記事全文](this.kiji.isドメインへ遷移)