ロンドン五輪開会式の芸術監督を務めたのは、英国を代表する映画監督のダニー・ボイルさんである。演出にも、史上初めて五輪を3度受け持つ自負にあふれていた。シェークスピアの戯曲「リチャード二世」に、イギリス賛歌とも言える「せりふ」がある。小池滋さんの「英国らしさを知る事典」(東京堂出版)から、おおまかに、散文化した1節を引くと「白銀の海に散りばめたこの宝石、この祝福された土地、この王領、このイングランド」となる。ボイル監督はシェークスピアの「テンペスト」から想を得て、テーマを「驚きの島々」にしたという。ショーの冒頭を飾るのは、牧草地、本物の牛馬などを登場させた英国の田園風景。小高い山、丘陵地が式典の最終まで、重要なポイントとなる。巨大な煙突が象徴する産業革命。近代工業国を打ち立てた鉄の威力。熔鉱炉から流れ出た灼熱の鉄が、上昇して「五輪のマーク」に。だが、科学や芸術に、インスピレーションを与えたのは田園の力にほかならない。ベッドに、患者姿の子どもたち、医療関係者を出演させてのアトラクションも珍しい。ポール・マッカートニーさんは会場と一緒に「ヘイ・ジュード」を熱唱。ジョン・レノンさんの長男ジュリアンさんを励ます内容の歌。「落ち込むなよ」「恐れるなよ」と。これは人類とアスリートたちへの応援歌でもあろう。五輪開会式は英国らしく、たかぶらず、気取らない演出で、理想は捨てないで、と呼びかけてくる。(N) ...[記事全文](this.kiji.isドメインへ遷移)