日の丸が掲揚台に掲げられている。日本のファンが、笑って手を振って喜んでいる。 「夢じゃないんだ。夢がかなったんだ」 卓球の福原愛選手(23)=ANA、青森山田高出=は、心の底から笑った。 3歳で卓球を始め、競技生活20年の節目の年に、3度目の五輪で手にした女子団体の銀メダル。表彰式で、やっと実感が湧いてきた。 中国との決勝は1番手で登場し、シングルス金メダリストの李暁霞選手と対戦。第2ゲームを奪う意地は見せたものの完敗だった。それでも、「全てを出し切って獲得した銀メダル。『本当に頑張ったよね』と思った」と胸を張る。 物心がついたころから「天才少女」として注目された。その分、いつも重圧を感じていた。 過去の2大会は、練習から逃げ出したり、泣きだしたりしたことがあった。昨年5月、終了後の世界ランキングでロンドン五輪出場が決まる世界選手権(オランダ)の期間中は、けがや試合に負ける夢にうなされ、眠れなかった。 今大会も重圧はあった。ただ、「プレッシャーを感じないというのは責任がないこと」とまっすぐに向き合うことができるようになっていた。 この4年間、コーチ不在の時期があった。早大も中退。私生活も含めて多くの苦難を乗り越えて精神的にも大きくなったからこそ、歓喜の瞬間を迎えることができた。 東日本大震災で、出身地の仙台市が甚大な被害を受けた。卓球を始めた街。友達もいる。大好きなラーメン屋もある。古里の惨状に胸を痛めた。 五輪行きを決め、混合ダブルス銅メダルも獲得した世界選手権から帰国した翌日に被災地へ。東京駅に向かう電車の中で、疲労のために倒れてしまうほどの強行日程だったが、少しでも早く被災者を励ましたかった。 銅メダルを持って避難所を訪問すると、みんなが喜んだ。子どもたちははしゃぎ、涙を流すお年寄りもいた。その時、「ロンドンでメダルを取って被災地に帰ることを心に決めた」という。 これで、大好きな仙台に、メダルを持って凱旋(がいせん)できる。「子どもたちと『メダル持って返ってくるから』と約束した。約束を守れて良かった」。古里に思いをはせた目が、少しだけ潤んだ。(ロンドン=大橋大介)