「忍耐力と克己心」−。ロンドン五輪で戦後最多の11個のメダルを獲得した日本の競泳陣の活躍ぶりに、ヘッドコーチを務めた平井伯昌氏の言葉を思い出した▼北島康介選手の恩師でもある同氏は、「突破論」(日経BP社)などの著書で説く。本番で勝てるタイムをはじき出すにはまず、レース展開や必要なリズム、泳ぎについて、指導する選手やライバルの動画を何百回も見て仮説を立てる。そして、実現へのトレーニングを確実に行う。五輪は技術と情報に基づく戦略の激突でもある▼ただ、最も重視するのは戦略を支える練習をやり遂げる努力。大切なのは体の素質より「心の素質」という。そういった精神力を身につけた選手が集まれば強い。400メートルメドレーリレーで、男子が銀、女子が銅メダルに輝いたのもうなずける▼数年前、韓国のサムスングループの研修施設で見た光景が浮かんだ。世界有数の企業に成長した秘訣(ひけつ)は合理性や効率性の追求にあると思いきや、「競争力」とともに「忠誠心」を徹底して求めていた。理由を尋ねると、「松下電器(現パナソニック)やトヨタに学びました」。「何を今さら」と言いたげだった▼ロンドン五輪の男子100メートル平泳ぎで世界新記録を樹立し、北島選手の3連覇を阻んだファンデルバーグ選手(南アフリカ)、北島選手の好敵手で大会前に急逝したダーレオーエン選手(ノルウェー)も、平井氏に教えを請うた。韓国や中国企業に押され、苦戦する日本企業の復活へのヒントは足元にある気がする。(司)