ベガ、アルタイル、デネブの大三角も、天の川も、その夜は主役の座を譲らざるを得ない。今年も各地で始まった。先週末は静岡市の安倍川や沼津市の狩野川に大勢の人を集めた。夏の夜空を彩る花火の季節の到来だ▼月が替われば、清水みなと祭り海上花火(静岡市)が5日。「全国花火名人選抜競技大会」の冠を頂き、文部科学大臣賞が創設されたふくろい遠州の花火(袋井市)は11日。15日前後には盆行事として、各地で開催が集中する▼ハナビストを自称する写真家冴木一馬さんの著書「花火のふしぎ」によれば、全国でひと夏に開かれる花火大会は約4500回。1日平均75回ほどになる。日本人の花火好きは世界屈指だそうだ。静岡県民も例外ではない▼よく知られているように、静岡市の駿府城では江戸時代の初め、徳川家康が中国人の披露した花火を見物したとの記録が残る。将軍家や諸大名に花火が流行するきっかけとなった。本県はいわば花火大会発祥の地である▼王侯貴族の結婚式や国の独立記念日など、欧米では祝賀行事の出し物として発展してきた。ロンドン五輪開会式の花火も見事だった。日本では昔から疫病や凶作、災害、戦争で犠牲になった人の慰霊やお払いの意味が込められた。華やかさの裏に刹那のはかなさが感じられるのも、そのせいか▼冴木さんによれば、庶民の楽しみだった花火は川端に集う見物客が縁を結ぶ「婚活」の場でもあったという。カップルはもちろん、親子も、友人同士も。節度を持って楽しんで、夏のすてきな思い出づくりを。