ありきたりの言葉ほど人を落胆させるものはない。例に挙げては失礼かもしれないが、プロ野球選手のインタビュー。「これからも応援よろしくお願いします」。判で押したような答えが返ってくる。聞くたびに「またか」の思いが先に立つ▼確かに締めくくりの言葉としては据わりがいい。「応援よろしく」と言われれば、もうそれ以上聞きようがない。暗黙の質問打ち切り宣言に等しく、味気なさはその辺りに由来するのだろう。こういうものを一般的に常とう句と言う▼プロ野球選手の紋切り型の返答に対し、ロンドン五輪のメダリストらの言葉は実に味わい深かった。ありふれた格言やことわざなど及びもつかない一種のすごみがある。五輪という大舞台にかける心の叫びのようなものが伝わってきた▼五輪語録から拾ってみる。松江市出身でテニスの錦織圭選手。日本勢88年ぶりの男子シングルス勝利を挙げた後に語った。「日本を意識して戦い、いつもより誇りを持ってプレーできた」「自分のやれることをするのが使命だ」▼水泳男子200メートルバタフライの銅メダリスト松田丈志選手は練習を振り返り「一分一秒を惜しみ調整してきた」。柔道女子57キロ級の金メダリスト松本薫選手は周囲に感謝。「自分一人だけの金メダルじゃないと勝った瞬間思った」▼いずれも20代の若者の言葉である。かつて「二つの言葉だけ覚えておけば務まる」と言って辞任した法相がいたが、この人は50代。言葉は年齢に関係しない。あるのは鍛錬の差だけだ。(三)