【ロンドン=杉山圭一郎】11人の石川県勢が挑んだロンドン五輪が幕を閉じた。柔道 女子57キロ級で県勢史上初の個人金メダルを獲得した松本薫選手(金沢学院東高OG) を筆頭に、石川の星たちは県民に感動と興奮を届けた。伸び盛りで大舞台を迎えた若い選 手も多い。ロンドンで見せた笑顔と涙は、4年後のリオデジャネイロ大会に向けて大きな 期待を抱かせた。  「パフェ食べたい」。松本選手は優勝を決めた直後、今何をしたいか聞かれてこう即答 した。畳の上での鬼気迫る形相から一転、穏やかなほほ笑みが印象的だった。表彰式後の メダリスト合同会見では「お菓子を我慢してたのが一番つらかった」と真顔で答え、敗れ た他国勢があきれ顔で頭をかく姿は爽快だった。  4位入賞したトランポリン男子の伊藤正樹選手は端正なマスクを崩して悔し泣きした。 本番は「どうやって最初のジャンプをしたか覚えていない」というほどの緊張があった。 真っ赤に目を腫らしながらも「力は出した。五輪ってこんなに楽しいところなんだ」と4 年後の巻き返しを強く誓った初五輪だった。  44年ぶりのベスト4と躍進した男子サッカー。守備陣の要として全6試合にフル出場 した星稜高OBの鈴木大輔選手は銅メダルを逃した瞬間、崩れるようにピッチに倒れ込ん だ。世界との差を肌で感じた一方、「大きく成長できた」と自信も深めた。「狙うべき場 所」というフル代表の座を目指す。  「人生って甘くない」。ウエイトリフティング女子75キロ超級9位の嶋本麻美選手は 、ひざの故障さえなければ入賞も可能だったが、「それも実力です」と潔かった。セコン ドとして三宅宏実選手の銀メダル獲得を支え、「全て貴重な経験。五輪ってすごい」と心 を震わせた。  若い2人の女性は4年後のメダルに夢を膨らませた。ウエイトリフティング53キロ級 12位の八木かなえ選手と、トランポリン14位の岸彩乃選手は金沢学院大2年の同級生 。成長して4年後にまた戻ってくることができるか。流した涙は大きな財産になる。  競歩の鈴木雄介選手(小松高OB)は果敢にレースをリードしたが、腹筋がつるアクシ デントで失速。物静かだが、心は熱い。「競歩をメジャー競技にしたい。松井(秀喜)選 手や本田(圭佑)選手と肩を並べたい」。高い向上心が涙を抑えた。  松下桃太郎選手(小松市)は惜しくも決勝進出ならず。1時間半で3レースをこなす過 密日程で体力を消耗したが、B決勝では世界王者とW杯優勝経験者を破る会心のレースを 見せた。母明美さんは「出場してくれただけで満足」とねぎらったが、4年後も期待でき る。  中川真依選手(小松市)は高飛び込み予選を8位で抜けながら、準決勝は18人中、最 下位。合宿からコンディション調整に苦しみ、不安視された体力が持たなかった。北京大 会の11位を上回ることができず、関係者にもたれ掛かって泣きじゃくる姿に会場スタッ フもつらそうだった。  競歩50キロの谷井孝行選手(金沢市)は軽度の気胸と診断され、リスクを持ちながら 出場したが、痛み再発で無念の途中棄権。出場すら危ぶまれたが「出るからには入賞した い」と強い気持ちで挑んだ3度目の五輪だった。  初出場の選手の多くは五輪の雰囲気に圧倒された様子だった。競泳男子800メートル リレーの小堀勇気選手の「観客は、選手に4年間の頑張りを見るから大きな声援を送って くれるんだと感じた」との言葉は印象的だった。  日本に第1号金メダルをもたらした松本選手ら石川県勢の躍進は、ロンドンに派遣され た日本人記者の間でも話題になった。11人は五輪の思い出を持ち帰る。その貴重な経験 は、選手本人のみならず、石川のスポーツ界にとっても大きな財産となるはずだ。