サッカー男子が26日に、優勝候補のスペインを破る大金星を挙げました。「奇跡」と呼ぶかは別として、欧州の強豪を五輪という大舞台で破ったことは、日本サッカー界の「一里塚」であることは間違いないでしょう。  私がサッカーを見始めるようになったのは1993年のワールドカップ(W杯)米国大会アジア予選の最終戦で、日本がイラクに引き分けて初出場を逃した、いわゆる「ドーハの悲劇」を目の当たりにしてからです。それまではサッカーの試合など見たこともありませんでしたが、劇的な結末に衝撃を覚えたのは忘れられません。  あれから、1996年アトランタ五輪でブラジルを破った「マイアミの奇跡」、1997年にW杯初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」など、語り継がれる節目はいろいろとありますが、今回の勝利もその一つとなることでしょう。  余談はさておき、グラスゴーでのスペイン戦を取材して、深く感じたのは、地元の観客のサッカーへの造詣の深さでした。  会場には約3万8000人のファンが詰め掛けましたが、そのほとんどはフル代表が欧州選手権を制し、世界一とうたわれるスペイン見たさに集まった人たちでしょう。実際に試合開始前の選手紹介では、スペイン代表のマタが電光掲示板に登場すると、拍手喝采で、日本の選手にはパラパラと喚声が送られる程度。期待値は雲泥の差でした。  試合を始まると、その反応がじわじわと変わってきました。無駄走りをいとわず、献身的に前線からプレッシャーを掛ける日本の守備に驚きの声が上がります。前半34分に、右CKからどんぴしゃりのタイミングでゴールネットを揺らした大津に喝采し、俊足の永井がドリブルでスペインDFを振り切ると会場はどよめきました。一方で、負けているスペインが最終ラインにボールを下げると「早く攻めろ」とばかりに、ブーイングが飛びます。  ひいきのチームを応援することはあるでしょう。ただ、それ以前に、いいサッカーに対しては称賛するという度量の深さがあるように感じました。日本がスペインの猛攻をしのいで試合終了のホイッスルが響くと、開始前とは一転、惜しみない拍手が送られました。勝利もさることながら、サッカーの本場で日本が評価されたようで、誇らしさを感じました。  語り継がれれるような瞬間に立ち会いたくてスポーツ記者を志したわけですが、実際に身を置いてみると、結構、冷静に受け止めている自分がいます。日本は既にW杯に4度出場している実績のある国。見る方の目も期待値も、格段に高くなっているのかもしれません。(グラスゴー共同=鉄谷美知)