スペインのパンプロナで18日開幕した世界3大自転車ロードレースの1つ「ブエルタ・ア・エスパーニャ」に、昨年に続き唯一の日本人として土井雪広選手(28)=アルゴス・シマノ、山形電波工高出=が出場している。今年の日本選手権王者で、各国のチャンピオンだけが許されるナショナルカラーのジャージーをまとい、スタートした。21日間にわたる大舞台は、土井選手にとって、失意の時期を温かく支えてくれた地元山形のファンに、その走りで感謝を示す場でもある。 自転車ロードレースの本場欧州でプロとして活動し8年目。経験も実績も重ね4月の日本選手権では地力の違いを見せて初優勝した。選手としての絶頂期に入ったと誰もが認めていた。だが、ロンドン五輪日本代表には選ばれず、有力視されていたツール・ド・フランス出場も、所属チーム内のメンバー選考で外れた。「ショックすぎた。なぜ選ばれなかったのか自分では理解できなかった。これだけやっても駄目ならもう今年で引退だなと考えた」。 落胆し自転車を見ることさえしなくなった土井選手。シーズン途中に一時帰国し、山形に戻った。そこにいたのは、いつものように笑顔で応援してくれる地元の仲間やファン。ほかの人たちには言えない本音も吐露した。「みんなの笑顔はやっぱり最高。応援してくれている人はたくさんいるんだと。単純な事だが、山形のファンに会ったことによって目が覚めた感じだった」 自分が走る意味を再確認し、世界の強豪たちと戦う意欲を取り戻して欧州に戻った土井選手は、その後のレースで好成績を残し、チーム内での存在感を高めてブエルタ連続出場を決めた。「選手としては一番いい時期。精神的にも肉体的にも良い状態で臨む今回のブエルタは、さらに自分のキャリアアップにつながる一歩にしたい」との言葉に、初出場の去年とは違う確かな自信がにじむ。 日の丸をあしらったジャージーも闘争心をかき立てる大きな要因だ。「日本のチャンピオンとして、山形県出身の選手としてナショナルチャンピオンジャージーを着て走るというのは格別な思い。テレビの画面の中で簡単に探すことができるので、かっこわるい走りをすれば目立つが、良い走りをすればもっと目立つ」と土井選手。「骨が折れようが、血を流そうが、21日間3360キロ先にあるマドリードのゴールまでの間、県民に多くの感動を与え続けたい」との強い決意でスタートを切った。