日本国民中の期待を背負った内村航平選手(23)が、無事に体操の個人総合で金メダルを取りました。この場を借りて「おめでとうございます!」。1年ほど前に五輪取材班に入り、家族や関係者への取材を進めてきた者として、その場に立ち会うことができたことに本当に感謝です。  私が初めて体操の大会を実際に見たのは昨年10月、東京で開かれた世界選手権でした。同時並行で競技が行われる、ある種の雑多さに驚かされました。しかしその時は、ホームであることの強み「地元力」には気が回りませんでした。  所変わって今回のロンドン。英国選手への応援は、すさまじいものがあります。英国旗をまとった女性が、髪を振り乱して叫びます。男性も女性も一斉に足を踏みならします。  「体操は内村君を中心に回っているわけではないんだ」。当たり前のことに気付かされました。  団体決勝。最終種目のあん馬で、田中和仁選手(27)が落下しました。演技を再開しようとする田中選手に向けて、ご家族や日本人のファンがどんなに温かい拍手を送ろうとしてもかき消されました。  内村選手のあん馬もしかり。英国の選手と演技が終わるタイミングが重なり、演技に乱れが生じます。「歓声がすごくて、地元の波にやられてしまった」と内村選手。  「これがホームの力」とがくぜんとし、日本の応援団としての寂しさを実感しました。一方で、このような国際大会を幾つもくぐり抜けてきた選手たちのたくましさに感心しました。  メダル獲得かと、もう狂喜乱舞する英国の方々。一方で日本は4位との結果が表示されました。「メダルなし」かと電光掲示板をじっと見上げる選手のご家族。山室光史選手(23)の母礼子さん(50)は「次の五輪にも出場できるかは分からない。十数年やって来たのにこの結果ではかわいそう」と泣いています。私も正直、涙ぐんでしまいました。  でも、家族の信じる心は強いです。「点数がおかしい。何か起きる。信じるのみ」と言い切ったのは内村選手の母周子さんです。  内村選手のあん馬の得点が訂正され、順位は2位に。地元力すら吹き飛ばすのは、やっぱり家族の愛なんですね。(ロンドン共同=林奈緒美)