大会もいよいよ終盤に入りました。陸上競技は後半10日間で行われますが、主役はやはり男子短距離のスーパースター、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)です。他種目を実施している最中でも競技場に入るボルトが大型スクリーンに映し出された瞬間、すし詰めとなった8万人収容の観客席は沸き返り、スタジアムは熱狂の渦と化します。  開幕前、ジャマイカ・オリンピック委員会の記者会見があり、10分間与えられた個別インタビューに日本メディアの代表として出席しました。代表取材のため、私の両手には国内の報道各社から託されたICレコーダーが11個も。両手で抱えて待っていると、姿を見せたボルトに「おまえ、何をやっているんだ」と苦笑されました。  さて、レース後のミックスゾーンでも各国の記者はボルトの声を拾おうと、2メートルほどの高さにあるスピーカーの前へ、レコーダーを持つ手を伸ばします。その姿はまさに「神の声」を拾おうとしている庶民たちで、非常に滑稽に映りました。私も背伸びしながら、腕を差し出す一人ですが…。その後のメダリスト記者会見でも約100席ある座席はいっぱいに。地べたに座ってメモを取る記者もいました。  ボルトについて感心するのは記者の質問に丁寧に対応する点です。開会前の記者会見では「選手村で配られるコンドームを使用する予定はあるか」など過剰な質問も出ましたが、むっとした顔をせず、笑いながら優等生の対応をしていました。メディアの先にいる何十億という人々を意識している様子がうかがえます。  4年前の北京五輪ではパトワと呼ばれるジャマイカ訛りの英語でしたが、今は比較的スタンダードな英語の発音で話します。一挙手一投足が注目を浴びる立場として、訛りも矯正したのでしょう。メディア対応も慣れてきて、ジョークもお手の物です。スタート前、レース後のパフォーマンスに加え、足だけでなく頭の回転も速い。ボルトは時代の寵児(ちょうじ)たる資質をすべて備えているように感じました。(ロンドン共同=三木智隆) ...[記事全文](this.kiji.isドメインへ遷移)