埼玉が生んだヒロインが、日本陸上界の歴史を変える-。3日、ロンドン五輪への出場権を手にした埼玉栄高校(さいたま市西区)2年の土井杏南選手(16)。日本の陸上界では戦後最年少の五輪出場に、周囲は大きな期待を寄せる。恩師や仲間らからは「思い切り楽しんできて」とエールが送られた。  運命の日を土井選手は学校で迎えた。期待した朗報はなかなか届かず、周囲もやきもき。午後6時15分、日本陸上競技連盟から学校に吉報が入り「うれしい。(五輪では)しっかりと自分の走りをするしかない」と、チームメートから祝福を受け、笑顔を見せた。  朝霞市出身の土井選手。中学生の頃から脚光を浴び、高校陸上競技界の名門・埼玉栄高校の門をたたいた。「中学で初めて見た時、足の回転の速さに驚いた。これから先、実力を伸ばすのが大変だと思ったけど、うまくやれると思った」。女子陸上競技部の清田浩伸監督(50)は、そう振り返る。  陸上界期待の星も、普段は「至って普通の高校生」(清田監督)。身長は158センチ。決して体格に恵まれているわけではない。普段から笑顔は絶えず、人気アイドルの話をしたりする。同じ陸上部員で同級生の奥冨莉央さん(16)は「注目されても気取らず、一緒にふざけた話もする。すごい選手だけど、そんなことを感じさせないくらい普通に接してくれる」。  笑顔の裏には、強い思いを秘めている。「とにかく練習では妥協しない。指導を受けたところは、直るまで練習を続ける」と3年で陸上競技部キャプテンの鈴木佑菜さん(18)。「天性のものに加え、とにかく努力をしてきた」と話す清田監督の予想をはるかに超えるスピードで、日本のトップ選手へと成長していった。  この夏、土井選手は世界の大舞台に立つ。「不安はない。最高の笑顔でスタートラインに立ってほしい」と清田監督。チームメートの鈴木さんは「悔いを残さず走るのがチームの目標。それを世界でも実現して、思い切り楽しんできてもらいたい」、奥冨さんは「16歳でもできるということを見せつけ、見てる人に勇気を与えてほしい」と期待していた。 ■恩師「世界見てきて」  土井選手の父親から送られた携帯電話のメールで五輪代表に選ばれたことを知った朝霞市立朝霞第二中学校の田嶋光雄教諭(52)から満面の笑みがこぼれた。田嶋教諭は土井選手が通っていた朝霞第一中学校の1年生の時の陸上部顧問で、第二中に異動した後も続けて指導に当たっていた。今でも大会の結果や心境などをメールでやりとりしているという。「アドバイスを素直に聞き入れ、吸収力が抜群。誰からも好かれていた」と振り返りながら、「(五輪は)小学校の頃から夢見ていた舞台。思いはかなうもので、世界の舞台で思い切り走ってほしい」とエールを送った。  昨年の日本選手権で100メートルで4位に入った時の走りを見て、「もしかしたら、日本のリレーのメンバーになれるのでは」と思ったと話す大森恵子教諭(30)は土井選手が中3の時の陸上部顧問。「ピッチの速さは天性のもので、瞬時に次の足が高いポジションまできていた」と説明する。代表選出に「世界を見て、いい経験をしてきてほしい」と声を掛けたいという。  新座市の陸上競技協会で小5の時から土井選手と練習し、朝霞第一中学校陸上部で400メートルリレーに出場して全国中学記録を更新した坂戸西高校陸上部の2年生、金子由衣さん(17)は中3の4月ごろ、結果が出せなくなった時、「まだこれからだから、頑張ろう」と励まされたという。「いつかは(土井選手)と大きな大会で走りたい。オリンピックは頑張ってね。でも、たまには遊びたいネ」とうれしそうだった。 ■杏南スマイルで/土井杏南選手の父・哲さん(45)の話  大変うれしいし、光栄です。こんなに早く夢が実現するとは思わなかった。陸上に真面目に取り組んだ成果だと思う。オリンピックでも、いつも通り“杏南スマイル”で駆け抜けてほしい。応援には行くつもりです。 ■よく頑張ったね/土井杏南選手の母・景子さん(44)の話  皆さんのおかげでここまでこれて、うれしいの一言。(五輪でも)杏南らしく元気に走ってほしい。おめでとう、よく頑張ったねと言ってあげたい。 ...[記事全文](this.kiji.isドメインへ遷移)